衛生管理者とは?人事労務の「スタンダード」資格
衛生管理者は、労働安全衛生法に基づき、職場の労働条件や作業環境を管理し、従業員の健康障害を防止する専門家です。
最大のポイントは、「常時50人以上の労働者がいる事業場では、必ず選任しなければならない」という法律上の義務がある点です。これは努力義務ではなく、選任を怠ると罰則の対象にもなるため、企業にとっては「絶対に確保しなければならない人材」となります。
さらに、選任後も週に1回は作業場を巡視し、設備や作業方法に問題がないかを確認するなどの実務が伴います。まさに「現場の健康を守る番人」と言えるでしょう。
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第一種と第二種の違い:どちらを受けるべき?
衛生管理者には「第一種」と「第二種」の2つの区分があります。受験を検討する際に、まずどちらを目指すべきかを知っておく必要があります。
- 第一種衛生管理者
- 対象業種: 全ての業種。建設業、製造業、医療業、清掃業、農林水産業などの「有害業務」を伴う可能性がある業種を含みます。
- 役割: あらゆる職場において、衛生管理者として活動できます。
- 試験範囲: 第二種の範囲に加え、「有害業務に係るもの」という高度な専門知識が問われます。
- 第二種衛生管理者
- 対象業種: 有害業務と関連の薄い業種。事務、小売、金融、情報通信、サービス業などに限定されます。
- 役割: デスクワーク中心の職場や、特定のサービス業でのみ衛生管理者として活動できます。
どちらを受験すべきか? もし現在の職場が完全にオフィスワークのみで、今後もその業界から出る予定がないのであれば「第二種」で十分です。しかし、転職を視野に入れている場合や、製造ラインを持つメーカーの人事を目指すなら、迷わず「第一種」への挑戦をおすすめします。第一種を持っていれば、日本国内のあらゆる事業場で活躍できるからです。
キャリアにおける価値:なぜ「武器」になるのか
衛生管理者は、一度取得すれば更新の必要がない「一生モノ」の国家資格です。世代によってその価値の捉え方は異なります。
20代の場合:「実務への意欲」と「ポテンシャル」の証明
20代であれば、持っているだけで「法律を遵守する意識がある」「実務に必要な知識を自ら学び取る姿勢がある」と評価されます。特に人事労務未経験でこの分野に飛び込みたい場合、衛生管理者は「口先だけではない意欲」を証明する強力なアピール材料になります。
30代の人事労務担当:「持っていて当然」のライセンス
30代で人事労務に携わっているなら、この資格はもはや「持っていて当たり前」のスタンダードです。労務管理の根幹である「安全衛生」を理解していることは、昇進やマネジメント層へのステップアップにおける最低条件と言っても過言ではありません。むしろ、この年齢で未取得だと「実務への専門性が足りない」と見なされるリスクすらあります。
試験の仕組みと難易度
試験は以下の3つの科目(一種は44問、二種は30問)で構成されています。
- 関係法令: 労働安全衛生法や労働基準法などの法律知識
- 労働衛生: 作業環境の管理、メンタルヘルス対策、救急処置など
- 労働生理: 人体の仕組みや疲労、ストレスの影響(生物・理科の内容)
合格基準の「落とし穴」
衛生管理者の合格基準には明確なルールがあります。
- 全体で6割以上の正答
- 各科目で「足切り(4割未満)」がないこと
「得意な1科目で満点を取り、苦手な科目は捨てる」という戦略は通用しません。たとえ合計点が合格ラインを超えていても、1科目でも4割を切ると不合格になります。**「満点を狙う必要はないが、苦手科目を作ると即不合格」**という、バランス重視の学習が求められます。
文系出身者が苦戦するポイント
人事労務に慣れている方にとって「法令」は馴染みやすいですが、多くの受験生が頭を抱えるのが「労働生理」です。「肺胞でのガス交換の仕組み」「心臓の拍動を司る神経」「ホルモンを分泌する器官の名称」など、中学・高校の理科(生物)の内容が含まれます。文系の方や法律の勉強を得意とする方には、最初は非常にとっつきにくく感じられるはずです。
必要な勉強時間と効率的な学習法
どれくらいの学習期間が必要かは、現状の知識レベルによります。
- 人事労務経験者:30〜50時間 法令や制度の基礎があるため、専門用語への抵抗が少なく、1ヶ月程度の集中学習で合格が可能です。
- 未経験者:60〜80時間 用語の暗記からスタートするため、2ヶ月程度の余裕を持ったスケジュールが必要です。
- オンライン講座利用:講義時間は約8時間 最近のオンライン講座は、試験に出るポイントを8時間程度に凝縮しています。これに自習(問題演習)を加えるのが最短ルートです。
攻略の鍵:3つの科目と対策の順番
効率的に合格を掴むなら、勉強の順番が重要です。いきなり難しい法令から入ると挫折しやすいため、以下の順序を推奨します。
1. 労働衛生(最優先!)
労働衛生は、実務と知識がリンクしやすく、得点源にしやすい科目です。作業環境の測定方法や、定期健康診断の種類、照明や換気の基準などを重点的に学びましょう。ここで8割以上取れるようになると、全体の点数が安定し、合格がぐっと引き寄せられます。
2. 労働生理
ここは「暗記」の勝負です。心臓の仕組み、神経系、感覚器官など、テキストの図を見ながら「自分の体の中で起きていること」としてイメージで覚えるのがコツです。覚えるべき固有名詞が多いため、早めに着手して、試験当日まで繰り返し復習し、記憶を定着させましょう。
3. 関係法令
最後に取り組むのが法令です。人事労務経験者なら、労働基準法に関連する部分は比較的スムーズに頭に入ります。また、出題ポイント(「〇〇人以上の場合は選任が必要」「報告書は〇年保存」など)が固定されているため、直前期の詰め込みでも得点を伸ばしやすい科目です。
落ちないための対策ポイント
過去問10年分を完璧にする
衛生管理者は、基本的に「過去問の焼き直し」が多い試験です。新しい傾向の問題も出ますが、合格ラインの6割を確保するためには、過去の類題を確実に取ることが最優先。 「なんとなく正解がわかる」状態ではなく、「なぜ他の選択肢が間違っているか」まで説明できるレベルで10年分を完璧にすれば、不合格になる可能性は極めて低くなります。
計算問題を軽視しない
暗記中心の試験ですが、WBGT値(暑さ指数)の計算や、有害物質の濃度計算などが時折出題されます。 算数レベルの計算ですが、試験本番の緊張感の中ではミスが起きがちです。配点は高くありませんが、前述の「足切り」を防ぐためには貴重な得点源となります。計算パターンは数種類に限定されているため、公式を覚えて確実に1点をもぎ取りましょう。
受験にあたっての注意点(スケジュール)
「受けよう!」と思っても、翌週に受けられるわけではありません。申し込みのハードルが高いのが衛生管理者試験の特徴です。
- 受験資格の確認: 衛生管理者の受験には「実務経験の証明」が必要です。会社から「実務従事証明書」に印鑑をもらう必要があります。
- 申し込みの手間: 願書の入手は、郵送で取り寄せるか、各地のセンターまで取りに行く必要があります。書類を揃えて郵送し、受理されるまで時間がかかるため、受験希望日の1〜2ヶ月前には準備を開始しましょう。
- 試験頻度と会場: 試験は毎月実施されていますが、人気の会場(特に関東など)は数ヶ月先まで予約が埋まっていることもあります。
まとめ:一生モノの武器を手に入れよう
衛生管理者は、一度取得すれば更新の必要がなく、一生モノの武器になります。特に人事労務でのステップアップを考えているなら、早めに取得して損はありません。
取得までのステップをまとめると以下の通りです。
- 受験資格を確認し、願書を取り寄せる(ここが最初の関門です!)
- 一種か二種かを選択する
- 労働衛生→労働生理→関係法令の順で勉強する
- 過去問10年分を徹底的に解く
まずは、自分の実務経験が受験資格を満たしているか、会社の証明をもらえるかを確認するところから始めてみてください。
次の一歩として:
まずは「安全衛生技術試験協会」のホームページから、受験申請書類のダウンロード(または郵送請求)をすることをおすすめします。書類が手元に届くことで、合格へのリアルな第一歩が始まります。



