原状回復費用の不当請求に注意!退去時トラブルの回避法とは
リーリエ行政書士事務所です。賃貸物件の退去時に「高額な原状回復費用を請求された」というご相談は、年々増加傾向にあります。原状回復とは、本来「借りたときの状態に戻すこと」ではなく、通常使用による損耗や経年劣化を除いた修繕に限られるという原則があります。
しかし、こうした原則が守られていない請求や、契約書の特約を盾にした不当な精算が多く発生しています。この記事では、よくある退去トラブルの例と、そうした請求にどう対処すべきか、具体的な方法を解説します。
この記事でわかること
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原状回復をめぐる典型的なトラブルの内容
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請求に納得できないときの冷静な対処方法
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実際に使える通知書面の例と相談先
Contents
原状回復をめぐるよくあるトラブル
ハウスクリーニング費用の全額請求
退去時に「専門業者によるハウスクリーニング費用」を全額請求されるケースがありますが、通常の清掃義務は借主にあっても、専門業者による清掃まで負担する義務があるとは限りません。特約が明確でない限り、貸主が負担すべきとされることが多いです。
経年劣化や通常損耗の費用請求
日焼けによる壁紙の色あせや、家具を置いたことによる床のへこみなどは「通常損耗」や「経年劣化」にあたります。これらの修繕費を借主に請求することは、原則として認められていません。にもかかわらず、これらの項目を含めて請求されることがしばしばあります。
一部の修繕に対し全面的な工事費を請求
たとえば壁の一部に小さな傷があるだけにもかかわらず、部屋全体の壁紙貼り替え費用を請求されるケースもあります。借主が負担すべきなのは、通常「傷がある部分の修繕費」のみであり、全体貼り替えを求めるのは不当なことがあります。
不当な請求への冷静な対処法
請求内容の詳細を確認する
まずは、届いた請求書をよく確認し、どの項目にどの程度の金額が請求されているかを明確にします。そのうえで、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と照らし合わせ、妥当性を判断します。
入居時や退去時の証拠を整理する
入居時に撮影しておいた写真や動画がある場合は、それらを見直し、損傷の有無や程度を確認します。また、契約書や重要事項説明書に書かれている内容も確認し、特約の有無をチェックします。退去時の現状写真もできる限り残しておくことが望ましいです。
書面での交渉に切り替える
請求に納得できない場合は、口頭ではなく書面で交渉を行いましょう。口頭だけのやり取りでは、「言った・言わない」のトラブルになりやすいため、内容証明郵便などを活用して、記録に残る形で主張を行うことが有効です。
通知書面の文例
不当な請求を受けた場合に送る通知書の例を以下に紹介します。実際に送付する際は、状況に応じて内容を調整する必要があります。
通 知 書
2025年9月19日
前略
貴社ご送付の「退去精算明細書」を拝見いたしました。
つきましては、下記のとおり、請求金額に疑義があるため、ご回答をお願いしたく、ご連絡いたしました。
記
請求明細のうち、経年劣化や通常損耗に該当する項目について、その修繕費用の法的根拠をご提示ください。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(国土交通省)によれば、経年劣化や通常損耗は賃貸人負担とされています。貴社の請求には、このガイドラインに反する項目が含まれていると考えられます。
上記項目についてご回答いただけない場合は、法的根拠のない請求と判断し、支払いを拒否いたします。
草々
困ったときの相談先
国民生活センター
消費者問題の専門機関として、無料でアドバイスを受けることができます。地域によっては訪問相談も可能です。
宅地建物取引業協会
不動産業者が加盟している協会で、トラブルの調停や指導を依頼できる場合があります。
弁護士・行政書士
個別の契約内容や交渉経緯に応じて、法的な主張や交渉の代行が可能です。専門家に依頼することで、相手との交渉を冷静かつ法的に進めることができます。
まとめ
賃貸物件の退去時には、原状回復費用に関するトラブルが発生しやすく、その多くは貸主と借主の認識の違いから生じます。高額な費用を請求された場合でも、慌てて支払うのではなく、まずは内容をよく確認し、必要な証拠をそろえ、冷静に対処することが重要です。
請求が妥当でないと感じたときは、書面による通知で自分の主張を明確に伝えましょう。それでも解決しない場合は、専門家に相談することで、適切な解決策を見つけることが可能です。
リーリエ行政書士事務所では、内容証明郵便の作成や契約書のチェックなど、退去時のトラブルに関するサポートも行っています。東京都江東区を中心に、全国からのご相談も受け付けていますので、不安なことがあればいつでもご連絡ください。
詳しくは こちらのサイト をご覧ください。
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