外国人ゲストとのトラブル事例|行政書士が勧める多言語ハウスルールの工夫

はじめに:民泊の国際化と運営者が直面する言語の壁

リーリエ行政書士事務所では、民泊を運営する個人事業主・法人の皆さまから、外国人宿泊者とのトラブルに関するご相談を数多くお受けしています。観光庁の統計でも外国人観光客の民泊利用は年々増加しており、英語圏のみならず中国語、韓国語、スペイン語など、多様な言語を話すゲストの受け入れが当たり前となりつつあります。

しかし言語や文化の違いが原因で、ゴミ出し、騒音、備品の使用方法などのルールが伝わらず、近隣住民やオーナーとのトラブルに発展するケースも少なくありません。

この記事では、外国人ゲストとのトラブル事例と、行政書士が勧める多言語対応ハウスルールの工夫について解説します。

この記事でわかること

  • 外国人宿泊者とのトラブルが起きる原因

  • 実際にあった事例とトラブルの経緯

  • 多言語ハウスルールの必要性と作成のポイント

  • 行政書士が支援できること

外国人ゲストとのトラブルが起きる背景

言語の壁と文化の違いが誤解を生む

民泊運営において、日本語で記載されたハウスルールや案内だけでは、外国人宿泊者にとって内容が十分に伝わらない可能性があります。特に生活習慣やマナーに違いがある国のゲストにとっては、たとえ表面的に「理解した」と言っていても、実際には意味を把握していないこともあります。

たとえば「夜間は静かに」「指定の曜日以外にゴミを出さない」などのルールは、日本では当たり前でも、外国人にとっては馴染みがない場合があります。結果として、ルール違反が繰り返され、周囲との摩擦や損害に繋がるリスクが生じます。

トラブル時の意思疎通の困難さ

いざトラブルが発生したとき、宿泊者と連絡が取れず、言語的な障壁で適切な対応ができないケースもあります。翻訳アプリに頼る運営では限界があり、状況説明や謝罪、改善指示などの重要なやり取りがうまくいかず、トラブルが深刻化することもあります。

実際にあった外国人ゲストとのトラブル事例

事例1:騒音トラブルとルール未理解

Aさんの民泊では、欧州からの宿泊者が深夜1時頃まで音楽をかけながら談笑しており、近隣住民から「眠れない」という苦情が相次ぎました。英語での案内文は用意していましたが、滞在者は英語を母国語としない地域出身で、内容を十分に理解していなかったと判明しました。

このケースでは、英語以外にもスペイン語・フランス語の案内を用意したほか、チェックイン時の説明をイラスト付きパネルで行うように変更し、再発を防止しました。

事例2:ゴミ出しルールの違反

Bさんの民泊では、アジア圏の宿泊者がゴミをビニール袋に詰めて共用廊下に出すという行為を繰り返していました。地域のゴミ出しルールでは「可燃ゴミは週2回のみ、指定袋に入れて決められた場所へ朝8時までに出す」ことが義務付けられており、Bさんは管理組合から指導を受けることになりました。

英語と日本語だけでなく、中国語と韓国語による案内を追加し、ゴミの分別と出し方を図解入りで説明する冊子を設置したことで、その後の苦情はゼロになりました。

事例3:備品の使い方が伝わらず破損が発生

Cさんの民泊では、温水洗浄便座の使い方を誤った外国人ゲストにより、ノズル部分の破損が発生。説明書は日本語のみで、イラストもなく、外国人にとっては操作が難しいものでした。

この経験から、Cさんはトイレ・キッチン・洗濯機・エアコンなどの備品について、多言語対応の使い方ガイドを設置。簡単な英語・中国語・ピクトグラム形式で解説することで、設備破損のリスクを大幅に減らすことができました。

多言語ハウスルールの作り方と工夫

対応すべき言語と優先順位

多言語対応を行う際、対象とする言語は「過去の宿泊者実績」に基づいて選定するのが効果的です。英語は基本として、中国語(簡体字)、韓国語、スペイン語など、実際に利用者が多い言語を優先的に対応させることで、コストと効果のバランスが取れます。

また、文字情報だけでなく「視覚的に伝える」工夫として、写真・イラスト・ピクトグラム(案内図記号)を使うと、言語に頼らず意思が伝わりやすくなります。

作成時に注意すべき文言のポイント

翻訳においては、正確性よりも「簡潔で誤解のない表現」が重要です。特に、否定形や命令形の文は、文化差により強すぎる印象を与えることがあるため、「○○してください」など柔らかい文調での表現が効果的です。

また、機械翻訳に頼りすぎると意味が通じない場合があるため、専門の翻訳サービスや行政書士によるチェックを入れることをお勧めします。

ハウスルールの配置と説明タイミング

ルールは「読んでもらえる場所に設置する」ことが何よりも重要です。玄関・洗面所・キッチン・ベッド脇など、ルールに関係のある場所に貼り付けたり、チェックイン時にタブレットやパネルで説明するなどの工夫が必要です。

また、予約段階で「ルール同意のチェックボックス」を設け、事前に周知しておくことでトラブル時の言い逃れを防ぐことができます。

まとめ:多言語対応はトラブル予防の第一歩

外国人ゲストとのトラブルは、言語の壁と文化の違いによって起きやすくなります。しかし、適切に多言語対応されたハウスルールを整備し、視覚的にも分かりやすく伝えることで、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。

行政書士としての立場から申し上げると、民泊運営における「説明責任」は非常に重要です。ルールを伝えた証拠を残し、トラブル時に正当性を主張できる体制を構築しておくことが、民泊経営の安定につながります。

リーリエ行政書士事務所では、民泊事業者向けの多言語ハウスルールの作成支援、翻訳文書のチェック、苦情対応文書の整備などを承っています。外国人ゲストの受け入れ体制を強化したい方は、お気軽にご相談ください。言葉の壁を乗り越える体制づくりをサポートいたします。

詳しくは こちらのサイト をご覧ください。