行政書士や司法書士とトラブルとならないために気をつけるべきこと

行政書士や司法書士とトラブルになったご相談をいただくことがあります。

トラブルになり、弊所にご相談いただくケースです。

これまでの事案を分類すると、受任者側に問題があるケースもあれば、依頼者側どちらにも無いケースとお話によって違います。

話を聞いてみると、業界上よくあることも珍しくありません。

「行政書士から連絡が来ない」「業務を依頼している行政書士が悪質だ」といったことも多いのですが、ちょっとしたコミュニケーションのエラーによるものが多いように感じています。

本コラムでは、どのようなケースでトラブルになることがあるのか、いくつかケースに分けて、ご紹介していきましょう。

さらに対策方法と、発生してしまったときの対応方法についても解説いたします。

受任者側(行政書士・司法書士側)に問題があるケース

受任者側に問題があるケースです。

意外と多い問題ですが、ある程度回避できるところにもなってきます。

1 新人あるいはその分野が専門分野ではなかった

士業に登録したてほやほやや、その分野が専門分野でなかったことにより、トラブルが発生する事例です。

つまるところ、経験の問題ともいえます。

他の行政書士が途中まで扱った案件を、事情があってお受けしたことがありますが、根本的な部分で業務処理方法が間違っているケースがありました。

不安な場合は、正式依頼前に処理手順を確認することをお勧めします。

受任者が依頼する業務内容を得意としているか、それなりに業務経験があるかどうか判断できるからです。

さらにHP等で確認しておけば、経験は大体見えてきますので、大方の問題は防げるといえます。

2 体調不良になった

受任者が体調不良になり、連絡が取れなくなるケースが稀にあります。

致し方ない問題ではありますが、ひとり事務所ではどうしても可能性がゼロにはなりません。

他にスタッフがいないためで、安く対応してもらえる可能性はある反面、私的な事情で当面の間業務が止まるリスクがあるのです。

ひとり事務所に依頼したのが悪いというわけではありませんが、常にコミュニケーションを取れる体制にしておく必要はあるでしょう。

3 スタッフ等が急に退職

スタッフが急遽退職して事務所が回っていないケースです。

士業業界は、移籍や独立、合併が比較的多い業界で、事務所の運営体制が変わりやすいところがあります。

組織自体が改変して連絡がつかないなどの可能性もあるのです。

そうなると、スタッフが退職して、業務に大きな影響を与えることも出てきます。

組織改編してもそうそう揺るがない巨大企業との屋台骨の大きさの違いです。

4 繁忙期である

士業の種類や事務所にもよって違いはありますが、繁忙期の影響は出てきます。

税理士事務所の場合、申告前、司法書士の場合は月末、士業全般共通なのが法改正前後は、間違いなく繁忙期です。

事務所をひっくり返すほどの大騒ぎの時期でもあり、猫の手も借りたいほど忙しくなるため、いろいろと影響が出る場合もあります。

このような時期では、事前に担当者に対して、業務終了見込みはどの程度になるか聞いておくといいでしょう。

5 コミュニケーションに問題がある

どんなことをいっても、ご相談は人対人です。

今はやりのAIなどではありません。

性格など合う・合わないがあります。

さらに残念なことですが、返信が遅い士業もいるのは事実です。

案件の内容によっては、電話だけで依頼を決めずに、直接会って人柄や事務所の雰囲気も含めて検討してください。

これだけでも、トラブルはかなり減らせます。

連絡の頻度は受任者によってさまざまです。

筆者も、終日事務所にいる場合は連絡もすぐに返せますが、出張や行政庁への事前相談等で出ていると、パソコンをほぼ1日触れないことも珍しくありません。

そうなると当然電話連絡も限られます。

海外出張を挟むと、丸2日近い時間、物理的にインターネットに繋がらないこともあるのです。

もちろん、頻繁にあるわけではありませんが、どこでもこうした問題はゼロにはならないでしょう。

案件や場面にもよりますが、目安48時間以内です。

この間に連絡が取れるのであれば、特段遅いとはいえないと思っています。

代表電話がありますので、営業時間は誰かしらが出てくれる、あるいは遅滞なく折り返しの連絡がある事務所であれば、問題ないはずです。

逆に受任者本人だけでなく、事務所電話にかけても誰も出ないことが続くなら、依頼を中止する検討をしたほうがいいでしょう。

委任者側に問題があるケース

次に、委任者側に問題があるケースです。

1 依頼の範囲を理解していなかった

委任者側が業務の内容を理解していないケースや、業務範囲を誤解しているケースが散見されます。

委任したらその案件を全てやってくれるかといえばそうではありません。

事前にどこまでを範囲として認識しているか、必ず確認してください。

誤認することは、あとからトラブルになるからです。

相続や離婚関係の場合、案件がどのように進むか、受任者側は初回案件だけで見通せないこともしばしば出てきます。

実際にざっくりとした見積もりしか、ご案内できない場合もあるのです。

弊所も相続案件を受任する場合、事案によっては受任段階で工数が見通せないことがあります。

その場合、稀に依頼者から質問をいただくことがあるのです。

相続の場合、当初相続人の数が不明なことが多く、依頼者が「4人」と認識していても、戸籍を集め調べてみたら隠し子が出てきて実は5人でしたという例もありました。

その他の事案でも、何らかの事情により、予想を大幅に上回る工数が発生することは出てくるものです。

事前に委任者側も工数の増加は起こるのだと理解していると、トラブルのリスクは減るでしょう。

当初の理解を超えることは、情報はすべて把握しきれない場合、高頻度で起こるものだからです。

2 受任者に対して、社会通念上無理をいっている

委任者が、受任者に対して、無理難題をいっているケースです。

受任者が辞任するケースのほとんどは、これが原因といってもいいでしょう。

委任者がどのようなこといったかは、ケースによってさまざまです。

例えば行政書士に対して、法律上取り扱えない登記手続をしてほしいといえば、理由を説明して不可能であることを伝えます。

それでも虚偽の内容を記載してほしいといわれれば、業務をお断りすることになるのです。

通常少なく見積もっても3ヶ月はかかる手続を、1ヶ月でやってほしいというケースもありました。

物理的にも不可能なため、お断りするしかありません。

特に許認可の更新手続で発生するケースです。

受任者は遅滞なく業務を行なっていたにも関わらず、委任者側で止まったため、結果として申請に遅れるトラブルも多くみられます。

申請手続に関しては、どちらにボールがあるかの意識が重要です。

3 依頼者が案件を勝手に進めるケース

「受任者が何もしてくれない」というケースの大半は、委任者側と受任者側のコミュニケーション不足が影響します。

そのなかで、委任者側が無断で勝手に進めてしまうケースがあるのです。

依頼者側の言い分は、「遅いから自分で進めた」ということが多いのですが、受任者側からすると、「案件の性質上、あえて止めておいた」場合もあるでしょう。

例えば、ある企業側に内容証明郵便を送った場合、個人であればすぐにレスポンスがあるものです。

ですが、大きい法人の場合、社内調整の都合で1ヶ月程度待つことも珍しくありません。

案件が動かないからといって、直ちに受任者に問題があるとは限りません。

このような場面で委任者が勝手に動くと、かえってリスクが生じる場面もあり、信頼関係を破壊するおそれがあります。

4 信頼関係を破壊するコミュニケーション

筆者が初回の面談で、ほぼ確実に受任したくないと思うのが、相談者が「他の士業が○○といった」「ネットにこう書いてあった」と発言するかたです。

筆者からすると、「ならその先生に依頼すればいい」「インターネットに書いてある情報を元に進めればいい」と強く思います。

これはどんな案件でも同じですが、前提条件が同様であっても、士業に説明したとき同じ結論になるとは限りません。

そもそも前提となる説明が同じだったかどうかわからないでしょう。

法的な見解は複数ある場合もあります。

採用する見解が異なれば、結論が変わることは、法律の世界では珍しくありません。

アプローチに関しても違いがあるからです。

インターネットに書いてある法律関係の情報は、必ずしも正しいとは限りません。

法改正や学説の変遷、判例変更等により、考え方が若干変わっていることもよくあります。

古い情報があたかも最新かのように乗せられていることもあるのです。

よって、「他の士業が○○といった」「ネットにこう書いてあった」と発言は、法律に関する相談を行う場では、タブーであるといえるでしょう。

目の前での比較は、信頼関係を破壊すると思ってください。

双方に問題がないケース

双方に問題がないケースもありますので、あげていきましょう。

手続に時間がかかっている

相続業務で、役所の対応が遅く、戸籍の取得や調査、手続に時間がかかる場合があります。

こうなると、手続がすぐに進まないことが出てくるのです。

近年の例として、ビザの申請をしたのに、連絡が来ませんでした。

通常であれば3ヶ月で何らかのアクションがあるのに、半年近く「審査中」だったのです。
こういったことも、最近はよくあります。

案件が動かない=受任者に問題があるとは限らないのです。

依頼する前の判断ポイント

それでは、トラブルのリスクを回避するために、どのような点に気をつけたら良いでしょうか。

ポイントを見ていきましょう。

筆者は、次の5つが重要だと考えます。

1 業務経験、専門分野と依頼内容の合致

法律業務は、非常に業務範囲が広い仕事です。

六法全書を見たことがある人はわかりますが、とんでもない情報量があると思いませんか?

例えば、離婚の公正証書に専門特化している行政書士に、インドネシアのビザ申請の依頼を依頼したらどうなるでしょうか。

もちろん、仕事として受けた以上、結果を出してくるとは思います。

ですが、ビザの申請を得意、専門としているところよりは工数も時間もかかるのです。

医療に例えるのであれば、歯が痛いのに、産婦人科に相談しても意味はないでしょう。

少し例は極端なのですが、依頼内容と事務所の得意分野が合致しているかは、その語の流れを大きく左右すると思ってください。

2 経験は豊富か

士業の経験は、人によってさまざまです。

開業間もない人もいれば、バックボーンとして専門家でもびっくりするような経験を積んできた人もいます。

ですが、やはり2〜3年以上の経験を有する事務所に依頼するのは、大事なポイントです。

ホームページなどで依頼候補者のプロフィールを確認し、従前どのような業務をしていたかも確認する必要があります。

会社員時代は全く法律に関わっていなかったが、試験に合格していきなり開業しました、という有資格者は多いからです。

一方で、その分野と過去の職種が何らか合致していれば話は違います。

例えば、倉庫業界に従事していたが、開業して倉庫業の申請を専門にしている場合です。

相当な知識と経験があるはずですので、事務所の年数以上の知識を持っていることがわかるでしょう。

業務分野が全く異なり、経験も浅い有資格者に依頼すると、どうしても調べながら進めます。

もちろん、時間がかかりますし、最悪の場合は業務が完了しないリスクもあるのです。

ただし、これは可能性の部分であり、リスクを減らすための条件と思ってください。

稀なケースですが、経験が浅くても、てきぱきとこなす士業もいるからです。

それほど経験が重要な業界といえます。

3 事務所が複数名で運営されている

事務所に他のスタッフが1名でもいるかは、重要だと筆者は考えます。

受任者の身に何があった場合、スタッフが一人でも機能していれば、何らかの状況がわかることが大半です。

一人の事務所の場合、受任者に何かあった場合、速やかに状況が伝わってきません。

スタッフが複数名いる事務所は、同じ業務内容でも割高であることも出てきます。

それでもリスクを鑑みれば、1割から3割程度の価格差は、許容範囲ではないでしょうか。

稀にあるのが、遺言執行や死後事務委任を依頼したが、受任した士業が先に亡くるケースです。

体調不良に陥ったケースも出てきます。

残念ながら一部の例外ケースを除き、この場合にはどうにもできません。

長期間の付き合いを有する業務は、比較的若い有資格者に依頼することも検討しないといけないでしょう。

何かあったときに代わりに対応してくれそうな事務所も探しておかないといけません。

それなら、複数名で運営している事務所のほうがリスクが低くなります。

4 価格と業務内容のバランスが妥当か

業務内容には、相場というものがあります。

稀に多数の事務所に見積もり依頼を行い、最安値で依頼されるかたもいらっしゃいますが、ハイリスクだと思わないといけません。

値段と品質の関係は依頼先や案件によってもまちまちです。

事務所の規模などでも変わってきます。

ですが、値段だけを見て選ぶには次のような懸念があるのです。

同じ案件でも見積もり価格が安い場合、業務範囲が一部限られていたり、イレギュラーな事態が起きたときの対応が限定的、または追加で費用が発生することがあります。

本当にその有資格者が安価に対応できる場合もありますが、業務範囲を含め、対応範囲を確認しておくと良いでしょう。

極めて軽微な手続で、どの受任者でもほぼ変わらないのなら、安いに越したことはありません。

一見単純にも思える申請や手続きでも、受任者のスキルで変わることも出てきます。

経験上、価格がやや高い事務所は、スタッフ体制が豊富、イレギュラーなときの対応も追加料金なしというところが多い印象です。

そもそも扱える業務範囲が広かい場合や利便性が高い事務所も少し割高な傾向があります。

価格とサービスレベルは、ある程度比例関係にあるため、安いだけで判断するのは、大きなリスクを抱えるのです。

複数の事務所に問い合わせる場合、目先の価格だけにとらわれず、目の前の課題を最後まで解決してくれるか、人として相性が良いかまで検討してください。

5 初回面談の日程を早めに組んでくれるか

筆者の私見ではありますが、事務所の対応力が一番出るのが、初回問い合わせの対応速度や日程調整のスムーズさだと思います。

対応力が高い事務所は、初回問い合わせに遅くても2営業日以内に連絡が来ますし、1週間以内に少なくともオンラインや電話で30分程度の相談は対応するところが大半です。

このペースをはるかに下回る事務所の場合、依頼しても業務連絡が遅い可能性が高いでしょう。
よほどその事務所ではないとできない案件でない限り、依頼するのは控えたほうが良いといえます。

もしトラブルになったら

先述の通り、トラブルの原因は受任者、委任者どちらか、またはどちらでもないケースなどさまざまです。。

トラブルが起きた際には、本コラムの事例に該当ないか、ご確認ください。

特に筆者が相談時に確認するのが、時間がかかる案件での進捗共有(連絡)の頻度です。

相続といった長い案件は、1年程度かかることもあり、少なくとも1〜2ヶ月に一度は必要と考えています。

メールの1通も連絡がない事務所の場合、委任者側から進捗共有の依頼をしても良いでしょう。

なかなか連絡が取れない、進捗共有がない場合は注意が必要です。

連絡して丸1週間も連絡が取れない場合は、中断して他の有資格者に依頼することも視野に入ります。

もしも、本当に連絡が取れない場合、他の事務所に相談してみてください。

その際、以下の3点をまとめておくと、相談が有意義になるでしょう。

1 契約内容

2 これまでの連絡頻度、内容

3 現時点における状況

まとめ

有資格者とトラブルになった場合、さまざまな解決方法考えられますが、まずは状況を整理することが重要です。

状況が整理できないと、別の有資格者とのコミュニケーションもままならないからです。

弊所でも、万が一トラブルになった場合、可能な限りご相談の対応をさせていただきますので、もしお困りの場合は、公式LINE等にてお問い合わせをお願いします。

とても長いコラムになってしまいましたが、最後までお読みいただきましてありがとうございました。