相続手続を進めたいが連絡が取れない 内容証明

相続人とは必ず連絡を取る必要がある

相続手続きには遺産分割協議書が必要です。遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容をまとめた文書のことです。
遺産分割協議には相続人全員の参加が求められ、遺産分割の方法と相続の割合を話し合いによって決定します。相続人全員が参加せずに行われた遺産分割協議は無効です。したがって、遺産分割協議書を作成するためには、すべての相続人と連絡を取らなければならないのです。

相続人と連絡が取れないときの対策とは?

相続手続を進めたいがどうしても相続人と連絡が取れないときの対策を6つ紹介します。

相続人の住所を調査する

相続人の電話番号や住所を誰も知らないときは、相続人の戸籍の附票を見てみましょう。
戸籍の附票とは、本籍を定めた後の住民票の移動を記録したものであり、戸籍簿と一緒に本籍地の市区町村が管理しています。
戸籍に載っている本人や配偶者、直系血族であれば戸籍の附票を取得できます。
それ以外の人でも、遺産分割の共同相続人として、自ら遺産分割を申し立てるという正当な理由があれば取得は可能です。
相続人の戸籍の附票には、相続人の住所が記載されています。
ただし結婚などで本籍を他の市区町村に移していた場合、取得した附票には現在の本籍にした日以降の住所しか記載されていません。
自分で戸籍の附票を取得することが難しい場合は、行政書士等の専門家に代行を依頼することもできます。

郵便を送る

住所がわかったら相続手続きについての郵便を送ります。このときの郵便は内容証明郵便で送りましょう。
内容証明とは、送付日や送られた文書の内容、差出人と受取人、受取人が郵便を受け取ったことを日本郵政株式会社が証明してくれる文書です(郵便法第48条)。
内容証明自体に法的根拠や拘束力はありません。しかし「相続手続きについての郵便を送りました」「いや、受け取っていません」など事実関係での争いを予防できます。
手紙の本文では、相続が発生し、手紙の相手が相続人になったこと、相続の対象となる財産について伝え、相続手続きに協力してほしいことをなるべく丁寧にお願いすると相手も返事をしやすいでしょう。

相続人の居場所に訪ねる

郵便を送っても、返事がないときは直接相続人の住所を訪ねてみましょう。
電話番号が分かるのであれば、電話で確認もしてみましょう。
いつまでも相続手続きに協力しない場合、相続財産を使用できないことや、不動産の場合固定資産税がかかるなどデメリットが生じます。また、直接会わなくても郵送上のやりとりで遺産分割協議は可能です。
このような事情を伝えながら、あくまで友好的な姿勢で相手を説得しましょう。

裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる

調べた住所に郵便を送ってみたが宛先不明で返送されたり、訪ねても全くの別人だったりしたときは、家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任」を申し立ててみましょう。
不在者財産管理人とは、行方がわからない人の財産を管理する職務を負う人であり、家庭裁判所により選任されます。
ただし家庭裁判所が不在者財産管理人を選任できるのは、相続人とまったく連絡が取れず、行方不明で、当面帰ってくる見込みが一切ない状態であるときです。
家庭裁判所が不在者財産管理人による遺産分割を許可してからでなければ、不在者財産管理人は遺産分割協議に参加できません。
不在者財産管理人の選任手続きには3カ月以上かかることもあり得るため、できるだけ早い時点での申立てをおすすめします。

参考:
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_05/index.html

裁判所に遺産分割調停を申し立てる

不在者財産管理人の選任の他に相続人と連絡が取れないときの対応策として、遺産分割調停があります。
遺産分割調停とは、家庭裁判所の裁判官調停委員で構成される調停委員会が遺産分割について話し合いで解決するよう斡旋する手続きのことです。
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てると家庭裁判所は相続人へ呼び出し状を送ります。内容証明郵便を無視していた相続人も家庭裁判所からの郵便であれば連絡してくる可能性があります。

参考:
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html

失踪宣告を申し立てる

どうしても相続人と連絡が不可能なときの最終手段として失踪宣告の申立てがあります。
失踪宣告とは、行方がわからず生死不明の人について、生死が7年間明らかでないとき、一定の要件を満たせば法律上死亡したとみなす制度です。
家庭裁判所に失踪宣告を申し立てると家庭裁判所調査官が調査を始めます。調査しても発見されないときは、審判が始まり、審判が確定すると失踪となります。連絡の取れない相続人の失踪が確定すれば、その相続人は法律上死亡したとみなされるため、他の相続人で遺産分割協議を含めた相続手続きを進められます。
失踪宣告の申し立てが認められるには半年以上の期間を要します。失踪者を死亡したとみなすことで自分の取得遺産が増えるなど、自分にとってメリットが大きい場合に行うと良いでしょう。

参考:
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_06/index.html