相続対策と生命保険

はじめに

「相続対策は複雑で、何から手をつけたら良いかわからない」というご相談をよく頂きます。確かに、考えなければならないことが多すぎますよね。

もちろん、税金を最小限に抑えて、一切の揉め事が起きないように100点満点の完璧な対策をすることもできますが、それだと非常に労力がかかります。大変すぎて、専門家でも胸焼けするほどなので相当です。

ですから、まずは80点でいいので、完璧とまでは言えないけれど、ほとんどの問題は解決する合格点の相続対策を目指してはいかがでしょうか。

100点満点を目指さなければ、相続対策は簡単で分かりやすいものに変わります。そして、その合格点の相続対策で活躍するのが、遺言書と生命保険です。

本ページでは、

  • 相続対策をシンプルにする、課題整理の考え方
  • 遺言と生命保険を活用した課題解決策

についてご紹介いたします。

相続対策をシンプルにする、課題整理の考え方

世間一般で相続対策というと、相続税対策を意識している方が多いように感じます。しかしながら、相続税対策から取り組むと、分割しにくくなったり、納税資金が不足したり、逆に争いの火種になってしまうことも多いです。

そのため、相続の問題は以下の3つのステップで考えると良いでしょう。

  1. どう分けるか?(分割対策)
  2. 税金は払えるか?(納税資金対策)
  3. 税金を下げられるか?(相続税対策)

相続が発生したら、まず遺言書か遺産分割協議書で資産凍結を解除します。そのためには、財産の分割方法が決定していなければいけません。逆に考えると、遺産の分け方が決まるまでは、財産の承継ができないとも言えます。そのため、何より優先して分割対策をする必要があります。

次に分け方が決まっていても、相続税が支払えるかが課題になります。相続税は、相続発生から10ヶ月で現金一括納付が原則なので、あまり時間的猶予はありません。

日本人の資産は、不動産が多いため、納税資金が足りず大慌てで不動産を叩き売りせざるを得ない状況になる方が沢山います。不動産業界では「相続マーケット」という業界用語もあって、相続発生による不動産の叩き売りを待ち構えている人たちがいます。

ですから、生前に納税資金の準備方法を検討しておく必要があります。そして、分割と納税をクリアできる方だけが、相続税対策に取り組むことができるのです。

1 どう分けるか?(分割対策)

相続する財産が現金や定期預金、証券などの流動性が高い資産だけであれば、分け方で困ることはありません。ところが、中には不動産、自社株等、分けにくい財産もあります。

そのため、自宅は配偶者、自社株は長男、現金は平等に分割といった、どうしても相続人間で差がついてしまうことが多いです。そのため、各相続人毎の金額差が原因で分割協議が完了しないことがよくあります。

このような場合にまず役に立つのが遺言書です。遺言書があれば、遺産分割協議をしなくても、まずは遺言書通りに財産が承継されます。ですが、それでも相続財産の金額差が生まれることでわだかまりが残ってしまったり、極端に差がついた場合は遺留分侵害額請求権の対象になり、紛争に発展してしまうこともあります。

この課題を解決するのに最適なのが生命保険です。被相続人の年齢や健康状態にもよりますが、生命保険に加入すれば、手持ちの資産よりも大きな金額の保険金を獲得できる可能性が高いです。また、生命保険の保険金は受取人固有の財産という特例があるため、分割対象財産から外すことができます。そして一番、相続財産額が多い相続人を、受取人に指定します。

そうすることで、生命保険に移し替えた財産は分割対象財産から除外されますし、増えた金額を利用して他の相続人へ分配する(代償交付金)ことで不公平感を解消することができます。

2 税金は払えるか?(納税資金対策)

財産の分け方が決まったら、次は納税資金の準備です。不動産や自社株を中心に相続した相続人は、資産額が高額になりやすい反面、納税資金が不足することが多いです。その納税資金準備の対策としては、生命保険が最適です。

先述しておりますように、相続における生命保険のメリットは、次の二つです。

  • 被相続人の年齢と健康状態にもよるが、支払い保険料よりも保険金が大きくなる
  • 受取人固有の財産となり、分割対象財産から除外される。(ただし、加入金額が極端に高額な場合は注意が必要。)

被相続人が保有する現金資産が大きい場合は、一括払いの生命保険に加入。手持ち資金が足りない場合は、毎年の収入から平準払いの生命保険に加入。どちらも難しい場合は、相続人が自らの資金で被相続人を被保険者にした生命保険に加入する方法もあります。(課税方法が所得税になります)

このように納税資金が不足するかもしれない場合は。生命保険が必要になります。

3 税金を下げられる?(相続税対策)

一般的な相続税対策としては、不動産を購入することや、生前贈与を行うことが考えられますが、法改正により、今までよりは効果が薄まる可能性があります。

そこで、考えられるのが、相続税を下げるために対策をするというよりも、相続人の手取り財産を増やすという考え方です。

一般的には、

  • 老後生活費として必要な資金以外は生命保険に置き換える
  • 相続人に生前贈与した財産で、被相続人を被保険者にした生命保険に加入する

という方法があります。

生命保険の保険料より保険金が大きくなるレバレッジ効果を活用して、手取りを増やして税金が増えたとしても手取り財産を増やしていきましょう。

まとめ

本ページでは、遺言と生命保険を活用した相続対策について、お伝えさせていただきました。

当事務所は、単に遺言書の作成や、相続手続をするだけではなく、遺言や生命保険を活用しながら、効果的に相続対策を行う手法を行政書士や相続診断士、ファイナンシャル・プランナーと提携をしながら行っております。

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