離婚の流れ、結婚と離婚の法的位置づけを行政書士がわかりやすくお伝えします!

日本人が一生の間に離婚を経験する割合(生涯離婚率)はどれくらいでしょうか。

実は国の統計で、直接的な生涯離婚率は公表されていません。

そのため正確な答えは不明です。

ただ大枠として、国立社会保障・人口問題研究所が公表している過去の離婚に関するデータを各分析機関が解析した結果があります。

この情報を基にすると、約4人に1人が生涯で離婚を経験するとされているのです。

このように、日本人にとっても、離婚は決して他人事ではありません。

ごく身近なものであることから、いざというときのために、基礎知識を持っておきたいものです。

これから5回に渡って、これまで離婚に関してご相談に応じてきた行政書士が離婚についてわかりやすく解説します。

結婚と離婚の法的位置づけ

結婚(婚姻)は日本国憲法第24条に定められています。

「両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」

具体的手続きや要件については、民法第4編第2章に定められています。

離婚とは、一般的には夫婦が生存中に婚姻関係を解消することです。

具体的手続きや要件は民法第4編第4節に定められています。

時々、配偶者の死後に離婚をしたいというご相談がありますが、民法第728条第2項に定められた姻族関係終了届という手続きになることから、正確には離婚とは異なるものです。

離婚の流れ

離婚の手続きについては、双方が合意している場合と合意していない場合で流れが大きく異なります。

夫婦が合意している場合、「協議離婚」という手続きをとります。

離婚届を作成し、役所に提出することで離婚が成立するため、離婚の手続きのなかでも単純です。

この根拠は、民法第763条「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。」との規定に基づきます。

従って、お互いで協議した結果であれば、離婚に至る理由は問いません。

国によって離婚の扱いはかなり異なり、離婚そのものを認めない国もあります。

条件として、一定の別居期間を経ないと離婚が認められない国もありますし、行政機関や裁判所による関与を要求する国もあるのです。

日本のように夫婦の協議で離婚が認められる国は、世界的にも珍しい部類に入ります。

これは宗教的な部分も含め様々な解釈があるため、どの制度にも一長一短があるともいえるでしょう。

結婚観という部分にも違いがあるからです。

一方で、協議が決裂したときは、家庭裁判所の調停委員の仲介で、夫婦が離婚条件について話し合う「離婚調停」に移ります。

一般的には、調停委員が夫婦を別々に呼び出し(相手方と直接、対面しません)30分程度の面談を交互に2回程度ずつ行うのが流れです。

ここでお互いの条件や主張を述べたうえで、夫婦双方が離婚条件に合意したときには離婚が成立(調停離婚)します。

ですが、合意しない・できないときは「離婚裁判」に移るのです。

離婚条件の相違がごく小さい場合には、家庭裁判所が審判により離婚を決定する「審判離婚」がとられることもあります。

期間としては、1回目の調停期日(呼び出しの日)から2回目までの間が1ヶ月程度です。

大体2回は行いますが、ここで終了というわけではなく、見通しがつきそうであれば、何回でも続けていくこともできます。

特に争点が多い場合、裏付ける証拠なども必要で、どうしても長期化するのも離婚調停の特徴です。

短期間で終わらせたい場合には、説得力のある証拠資料を集め、調停委員の印象にもつながる陳述書に気を付けるなどのポイントがあります。

離婚裁判では、法定離婚事由の存在を立証しなければいけません。

この事由により、離婚成立の判決を得る必要があるからです。

なお、裁判の途中で和解が成立する「和解離婚」もありますし、被告が離婚請求を受け入れる「認諾離婚」に至ることもあります。

裁判離婚になると、審理にかかる期間は相当長くなり、1年以上に及ぶことも珍しくありません。

法定離婚事由とは

相手が拒否しても、裁判で離婚が認められる法定離婚事由とはどのようなものでしょうか。

民法第770条第1項には、裁判上の離婚として、次の5つの場合に限り、夫婦の一方が離婚の訴えを提起することができるとされています。

つまり、法定離婚事由がなければ、裁判離婚は成立しないということです。

①配偶者に不貞な行為があったとき

「不貞な行為」とは、本人の自由な意思に基づいて、配偶者以外の異性と性的な関係に至ることを指します。

例えば、ホテルに一緒に入っていく写真は不貞行為に及ぶであろう証拠となりますが、ただ仲が良い程度では不貞行為があると推測できないため認められないと思ってください。

この辺りは、不貞行為に対し明確でなければいけません。

②配偶者から悪意で遺棄されたとき

悪意の遺棄とは法律用語です。

民法752条「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」との規定を遵守しないことを指します。

例えば、収入があるのに生活費を家庭に入れない、単身赴任などの理由がなく勝手に別居や家出をした、家を閉め出して帰宅できないようにしたということです。

特に注意しなければいけないのが、勝手に別居したケースでしょう。

勝手に家を飛び出すだけで、この離婚事由に該当する可能性が出てくるからです。

③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

完全に行方不明となっていて、生死もわからない状況を指します。

この理由の場合は、相手方との協議ができません。

そのため、調停を経ないで最初から離婚裁判になります。

生死が不明であるときには、民法第30条の失踪宣告も検討の余地があります。

戦争・船の沈没等では1年間、その他の場合では7年間が該当期間です。

この場合は裁判による離婚とは異なり、遺産相続もできます。

これだけの期間、行方がわからなかったのですから、もう亡くなっていると同等の解釈です。

出産適齢期等の理由から早く次の結婚に踏み切りたい場合、生死不明の結婚を続けることが精神的に苦痛であるときなどは裁判離婚が有利です。

それ以外では、失踪宣告の方が経済的には有利に働く場合が多いでしょう。

裁判離婚であれば、一度離婚が認められれば覆されることはありません。

ところが、失踪宣告の場合は、失踪していた配偶者の生存が判明したときは民法第32条に基づき失踪宣告の取消となり、復縁することとなります(相続財産も返還義務が生じます)。

なお、3年以内であっても「悪意の遺棄」による離婚の訴えの提起は可能です。

④配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき

何らかの理由で意思の疎通が難しい精神病に罹患し、裁判で適切な治療を受けても回復の見込みがないと判断されるとき、離婚が成立するものです。

⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

過去の裁判例では次のような事例が重大な事由として認められています。

  • 家庭内暴力
  • セックスレス
  • 長期間に及ぶ受刑(服役)
  • 過剰な宗教活動
  • ギャンブル、アルコール、薬物依存症
  • 配偶者の親族からの虐待(配偶者が認識しているのに放置した)

夫婦関係が破綻していると認められることが重要となりますが、さらに細かな原因が影響してきます。

事実認定も必要となるため、過去の判例などからも比較していかなければいけません。

まとめ

今回のコラムでは離婚に関する基礎知識として、離婚の枠組みや法定離婚事由についてご紹介しました。

次のコラムでは、行政書士事務所に相談を頂くことが多い「協議離婚」について詳しくご紹介します。

東京深川行政書士事務所では、離婚後のトラブルを未然に防ぎ、長期にわたって安心が得られるよう、話し合いや合意した内容を書面に残しておく「離婚協議書」作成のサポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。