既判力とは何か?行政書士がわかりやすくお伝えします!

はじめに

既判力とはどういうことなのでしょうか。

民事訴訟法114条1項には、「確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する」とあります(以下、条文のみを表記します)。

114条2項にも、既判力の用語が出てきますが、この規定は、相殺のために主張した請求の成立または不成立の判断について既判力が生じるとするもので、特段、既判力の意味や内容の理解につながる規定ではありません。 

既判に力とありますから、すでに判断された効力が関係するのでしょうか

いいところに目を付けましたが、それだけでは何のことなのかわかりませんよね。

そこで今回は、既判力について、基本となる知識をお伝えします。

既判力とは

既判力とは、一般に、確定判決の判断に与えられる通用力または拘束力のことをいう、とされています。

そして、この既判力は、相殺の場合の例外を除き、訴訟物たる権利または法律関係の存否(請求認容判決の場合は存在、請求棄却判決の場合は不存在、請求一部認容判決の場合は認容部分の存在とその余の不存在)について生じると考えられています(114条1項の解釈)。

このような説明でわかりますか。

もう少し説明を加えてみましょう。

別な言い方をすれば、既判力とは、確定判決で示された判断がその後の訴訟で基準となる、ということです。

具体的に見てみますと、後の訴訟では、裁判所は、前の訴訟の確定判決の判断と矛盾する判断をすることは許されず、前の訴訟で当事者だった者も、前の訴訟の確定判決の判断に反する主張をすることは許されない、ということになります。

確定判決で示された判断には、このような通用力または拘束力があるわけです。

そこで以下では、順次、既判力の作用、既判力の時的限界(基準時)、既判力の客観的範囲、既判力の主観的範囲について見てみましょう。

1 既判力の作用

既判力の作用には、積極的作用と消極的作用があります。

積極的作用は、「後訴裁判所は、既判力の生じた前訴判決の訴訟物についての判断を前提とした判断をしなければならない」というものです。

消極的作用は、「判決の既判力ある判断に反する主張や証拠の申出を当事者がすることは許されず、たとえかかる主張・証拠申出を当事者がしても、裁判所はその当否の審理に入ってはならない」というものです。

そして、前訴の既判力が後訴に作用するのは、❶前訴と後訴の訴訟物が同一の場合(同一関係)、❷前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の前提関係に立つ場合(先決関係)、❸前訴の訴訟物が後訴の訴訟物と矛盾する場合(矛盾関係)であり、訴訟物が異なっていても、既判力制度の趣旨に照らし、前訴確定判決の既判力は後訴に及ぶと解されています。

以上は、いずれも既判力が勝訴した当事者に有利に働く場合です。

しかし、既判力は、勝訴した当事者だけに有利に働くのではなく、既判力の及ぶ者の間で、そのどちらの有利にも不利にも働きます(このことを「既判力の双面性」といいます)。

2 既判力の時的限界(基準時)

既判力は、あくまでも口頭弁論終結時の権利または法律関係の存否を確定するものです。

そのため、その前に発生していた事実を理由に挙げて、判決で確定された権利または法律関係を争うことは許されませんが、口頭弁論終結時後に新たな事実が発生した場合には、当然その点を主張して新たな訴えを提起することはできます。

3 既判力の客観的範囲

確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有します(114条1項)。

判決主文に示される裁判所の判断とは、本案判決においては、権利または法律関係の存否についての結論的判断ということになりますから、原告の被告との関係における訴訟物の存否の主張についての裁判所の判断を意味します。

したがって、既判力は、訴訟物たる権利または法律関係の存否についての裁判所の結論的判断について生じることになり、既判力の客観的範囲は訴訟物の範囲と一致します。

なお、判決主文は、「被告は、原告に対し、1000万円を支払え」などと簡潔に記載されますから、それが、売買代金なのか、請負代金なのか、債務不履行による損害賠償金なのか、不法行為による損害賠償金なのかは、主文に記載されている文言だけで既判力ある判断の内容を確定することはできません。

そこで、訴訟物が請求の趣旨およびその原因によって特定されることと照応して、既判力ある判断の内容は、主文だけでなく判決の事実および理由中の記載をしんしゃくして特定されると理解すべきことになります。

条文上も「主文に包含するもの」とされているのは、このような趣旨で理解されます。

4 既判力の主観的範囲

既判力は、対立当事者間にのみ及ぶのが原則です(115条1項1号)。

裁判は、当事者として訴訟手続に関与した者の間においてのみ相対的に紛争を解決するものにすぎません。

しかし、当事者間で行われた訴訟による紛争解決の実効性を確保するためには、訴訟物たる権利または法律関係に利害関係を有する第三者に対し既判力を及ぼす必要が生じる場合があります。

そこで、民事訴訟法は、一定の場合に、例外的に第三者にも既判力の拡張を認め、既判力は、
❶他人のために第三者が訴訟担当した場合におけるその他人(115条1項2号)、
❷口頭弁論終結後の承継人(115条1項3号)、
❸請求の目的物の所持者(115条1項4号)
にも及ぶとしています。

おわりに

既判力とはどのようなことかについては、おわかりいただけたでしょうか。

既判力は、訴訟の当事者ばかりでなく、相続人など利害関係者にも関係してきます。

ある判決が確定し、その判決の効力(既判力)がご自分に及ぶのかご心配の場合には、行政書士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

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