法律の専門家とのコミュニケーションの取り方を、行政書士がわかりやすくお伝えします!

はじめに

弁護士や司法書士、行政書士は、なにかあったときに頼れる法律の専門家です。

それぞれの領域で専門性を有し、有事の時は助けになってくれます。

ですが、士業を営んでいる人たちも人間です。

一般的なマナーや作法から逸脱すると、受任してもらえない場合もあります。

契約していても、辞任されることすらあり得るのです。

本コラムでは、みなさまに、法律の専門家とのコミュニケーションの取り方をお伝えしたいと思います。

委任契約とはなにか?

委任契約を簡単にいうと、依頼者(委任者)が、業務を行う専門家(受任者)に、ある事務内容を依頼する契約をさします。

比較的中長期な事務処理の場合、何らかの形で契約書を締結することが多いでしょう。

契約を結んだ以上、一方的に契約解除する場面はあまりありません。

ですが、委任契約は当事者間の信頼関係が非常に重視されるため、民法上はいつでも契約解除できるのです。

覚えておいてほしいのは、この信頼関係にあります。

法律の専門家に仕事を依頼する契約形態は、信頼関係が重視されることを覚えておいてください。

どの場面でも、「信頼関係」が非常に重要な意味を持つからです。

初回のお問い合わせは丁寧に

はじめてコンタクトをとる方法として、紹介やインターネット経由が多くなりました。

どのような方法であったとしても、相談となれば性格など人となりが見えてきます。

弊所は月間100件から200件程度の新規のお問い合わせをいただきますが、限られた情報から、どんな人なのか想像するのです。

なぜならば、長く信頼関係を構築するためにも必要で、業務遂行のためにも欠かせません。

つまり、第一印象の影響が出てくるといえます。

そのため、できるだけ丁寧に問い合わせするのがポイントです。

横柄な態度はできるだけ辞めましょう。

仕事を請けてもうまくいかないと想像され、断られる可能性が高くなるからです。

相談は簡潔に 補助資料があると尚良い

法律の専門家は、短時間で情報を整理し、なにが起きているかを判断します。

経験が影響する部分であり、特殊な事案でない限り、短期間で事案の全体像を判断するのです。

そこから展開を整理していきます。

たとえば初回の相談として、電話をかけたとしましょう。

だらだらと論点が見えなかったらどうなるでしょうか。

ただ時間だけが過ぎていき、大事な部分が見えなくなりますよね。

重要ポイントは、要点を簡潔にまとめて話すことです。

時間の短縮になるだけでなく、なにを伝えたいかはっきりするので、お互い問題認識がしやすくなります。

対面で話す場合には、事前に要点をまとめた資料を渡すと、よりスムーズです。

要点をまとめるうえでとにかく大事なのが、

誰が、誰に対して、どんなことをしたいのか

を伝えることです。

そのための事前資料であれば、簡単に骨子が伝わります。

解決のための展開を考えるためにも、簡潔で分かりやすく伝えるのが大事なのです。

法律の世界では、簡潔にまとめるために、結論から始めるパターンがあります。

不服審査や訴訟実務でも結論から始まり、法学部やロースクールでも結論から始まることが一般的です。

結論から要点を伝え、最終的結論で結ぶことで、なにが結論につながったのかが見えやすくなります。

細かい背景事情を先にするより、論理的展開で分かりやすくスムーズな場合が大半なのです。

相談資料を作る場合にも覚えておいてください。

依頼意思は早めにすると好印象

初回相談から実際の依頼まで、なるべく期間が開けないこともポイントです。

時間がたてばたつほど、委任者、受任者双方共に重要な事実な情報の記憶が薄れます。

事案の性質により、依頼までどうしても時間がかかる場合は、どれぐらいになるか目安を伝えると丁寧です。

とにかく専門家の意見が欲しく、さまざまな事務所に問い合わせをする方もいます。

意見を集めてからという人もいらっしゃいますが、結局誰の意見が妥当なのか判断がついていない点で、解決にから遠ざかってしまうことが多いでしょう。

実務家から見れば、「とりあえず意見を求めている」ことは明白です。

普段から実務に携わっているのですから、すぐに判別がついてしまいます。

実務家としては、自身の腕を見込まれて委任されたいと思うのが、プロとして当然です。

「誰でも良いのでとりあえず対応して欲しい」という温度感は、最低限はしますが、手厚い対応は望めないと思っていいでしょう。

「専門知識を持っているあなただから問い合わせしています」という姿勢は、必ず印象につながるのです。

時間が経過すると、問題の本質的部分で余計な要素が増えてくるのも忘れないでください。
怪我をしたとしましょう。

今ならなぜ怪我をしたか、原因は明白です。

ですが、時間がたてば、さまざまな要因が加わり、怪我で痛い理由にいろいろなことがくっつきます。

絡み合った糸をほどくためには、それだけの労力が必要となるのですから、時間がたつことはメリットがないのです。

結果として依頼しなくても、お礼を伝える

依頼するかどうかは、究極的に見れば、結果のひとつでしかありません。

結果として結びつかない可能性は、いつでもあるわけです。

それでも、丁寧に対応してもらえた場合は、最低限お礼を伝えるのがマナーではないでしょうか。

弊所にも問い合わせをいただき、専門家が丁寧に対応しても、既読だけで一言もないケースが一定数あります。

みなさまが「ちょっと聞きたい」と思われることも、実は膨大な時間の積み重ねによって得られた情報や知識です。

回答するために、文献や過去の判例も参考にすることも少なくありません。

みなさまからすると、偉そうな対応な態度な専門家は、上から見られているようで嫌だと感じるでしょう。

実務家側も変わりません。

相談者や依頼者への印象が悪いと、仕事もうまく運ばないため、とても重要視しているのです。

たった一言のお礼を伝えられるか。

人生のなかでも大切なことだと思っています。

実務家が敬遠する依頼者

実務家が最も敬遠する依頼者は、不利な事実や前提情報を事前に共有しない、あるいは虚偽の情報を伝えるケースです。

前提情報が誤っていると、多くの場合、結論が変わります。

元が間違っているのですから当然です。

実務家は、多少不利な状態でも、委任者のために頑張ろうと思います。

これは依頼者の利益の最大化を目指すからです。

それなのにもかかわらず、基礎とする事実が隠されていた、あるいが虚偽であった場合、信頼関係は一気に崩壊するかもしれません。

場合によっては、誤った判断となり、専門家の有する法律資格が失われる可能性さえあるからです。

逆に案件に関する情報を遅滞なく共有し、事実を伝え、素早く返信すれば、辞任につながる可能性は極めて低いといっていいでしょう。

依頼者の落ち度はないからです。

実務家が辞任を検討する場面

実際に業務上、やむを得ず辞任を検討するのは以下のような場面です。

  1. 業務遂行に関連する情報がどうしても出てこない
  2. 日常のコミュニケーションが喧嘩腰
  3. 依頼内容が公序良俗に反する

特に多いのが3番で、依頼内容や内容証明郵便に記載する文言が、社会通念上公序良俗に反する可能性があることは、非常に実務家にとってもリスキーです。

特に過去の勤務先に対する内容証明郵便作成の場面でよく発生します。

これまでにさまざまな不満があり、いいたいことが多々あるのもわからなくもありません。

ですが、およそ法的主張が認められない内容は、法律の専門家として書面には入れられません。

法律家として、公序良俗に反した主張はできないのです。

そうなると、どうしても契約履行不可能となるため、辞任を検討します。

まとめ

本コラムでは、

  1. 専門家への問い合わせのマナー
  2. 実務家に辞任されたいために気をつけるべきこと

について説明させていただきました。

弊所は、年中無休でさまざまな相談を承っておりますので、少しでも困ったことがございましたら、気軽にLINEご相談いただけますと幸いです。

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