契約解除の意思表示は内容証明郵便での通知が効果的!その理由を行政書士が解説します

契約解除にも色々なパターンがありますが、本記事では大家さんから賃借人への賃貸借契約の解除を取り上げます。

内容証明郵便とは?

内容証明は、郵便局で扱っているサービスのひとつで、普通郵便や書留郵便と同じように郵便の一種です。
送付日や送られた文書の内容、差出人名、受取人名、受取人が郵便を受け取った情報などを日本郵政株式会社が証明してくれるサービスになっています。
つまり、記録を残すことができるのが特徴です。
内容証明郵便自体には法的拘束力はありませんが、コピーを残せるため、送付した内容を証明できるサービスといっていいでしょう。
ここが重要です。

仮に賃借人に延滞している家賃10万円を請求する内容の内容証明郵便で送ったとします。
送ったからといって、必ず払わないといけないという法的拘束力はありません。
請求に応じるか否かは賃借人が決めることですが、内容証明郵便という特殊性が大きな役に立つのです。

「期日までに延滞賃料を支払わないときは、賃貸借契約を解除する旨の郵便」を送ったとしましょう。
内容証明郵便であれば、内容の記録、送信した状況、受け取りに関することが記録されます。
つまり、事実ということを証明できるため、これまでさまざまな場面で使われてきたのです。

契約解除と内容証明郵便

家賃を例にとってみると、契約解除の意思を内容証明で送付した場合、どのようなメリットが生まれてくるか見てみましょう。

・賃借人にプレッシャーを与えられる

普段の生活の中で、内容証明郵便を受け取ったことはありますか?
普通の人はないと思います。
そこで、内容証明郵便を受け取ったとしましょう。
表には「内容証明書在中」と赤スタンプが押されています。
これだけで、何か異変があったということを感じるはずです。
普段の生活の中にはないことだからこそ、驚きと恐怖などのプレッシャーが生じます。
これが心理的に強いプレッシャーとなることが、内容証明郵便では大きな意味を持つのです。

封を開けてみると、「家賃の支払い」に関する記述、指定期日などがあれば、これに従わないと、法的手段に打って出られるのではないかというプレッシャーがかかります。
送付したことの意思の確認もできるわけですから、早めに対応しないとまずいと感じるのです。
これが内容証明郵便の効力といえます。

賃料の支払いと契約解除条件を告げた証明

内容証明郵便は、送付したコピーを残せるのが重要ポイントです。
延滞賃料の請求や賃貸借契約の解除を通知した場合、内容を証明できます。
内容を証明できるということは、あとから言った言わないにさせないことを意味しているでしょう。
こちらは明確に提示した旨を証明できる強みが出てきます。

賃料請求の時効を一時的に中断できる

民法第166条第1項

債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
これが家賃の支払いに関する時効の条件につながります。
ここで重要なのは、「知ったとき」という文言です。
知ったときから5年を過ぎると、大家は延滞賃料を賃借人に請求できなくなります。

民法第150条第1項

催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない
ここに内容証明郵便の内容を証明できる意味があります。
内容を証明できるということは、相手は家賃に関する催告があったことを知っているわけです。
ということは、この時効は完成しないということになるでしょう。
つまり、内容証明郵便を送付して受け取った時点から、時効を6か月は延ばせることを意味します。
ただし、できるのは1回だけしかありません。
2回目以降は延長できないため注意が必要です。

内容証明で書くときの注意点

内容証明郵便では、内容がとても重要になります。
書く際に注意することを書式と記載内容、表書きに分けて見ていきましょう。

・書式

内容証明の書式は、細かく決められています。
字数と行数の制限は下記のとおりです。

1 縦書き

・1行20字以内で1枚26行以内

2 横書き

・1行20字以内で1枚26行以内、
・1行13字以内で1枚40行以内
・1行26字以内で1枚20行以内

3 電子内容証明郵便

・1枚あたり1,584文字が目安
(割高になるのであまり普及していない)

縦書き、横書きいずれも1枚の文字数は520字以内になります。
ですが、枚数に制限はありません。
用紙もどのようなものでも構わないのです。
制限があるのは文字数だけと思ってください。

この書面は3通用意することになるのが重要です。
・郵便局が保管
・送り先に届くもの
・差出人の控え
この3通があるからこそ、内容を証明できることになります。

もしも間違ってしまって訂正するときは、当該箇所に2本線を引き、加筆しましょう。
最後に何文字を訂正・削除・追加したかを記載することも必要です。

記載内容のポイント

内容証明郵便は、何を書いてもいいわけではありません。
狙った効果を得るためにも、適切な書き方が必要です。

具体的事実を書く

内容証明郵便は、事実を具体的に書き記すことが大切です。
たとえば、家賃の請求だとします。
現在いくら残っている家賃をいつまでに支払わなければ、契約を解除する旨を記せばいいでしょう。
無駄な情報は、余計な問題を作り出します。
簡潔にまとめ、感情的な表現は無くすことが大切です。

ですが、受け取る側の心理も理解しなければいけません。
なぜ支払わないのか、それとも支払えないのかといったことも考えて作る必要があるでしょう。

作成に関しては、法律の専門家が入って作成する方が確実です。
内容証明郵便を利用するのは誰でもできますが、この書き方に関しては経験が大きく左右します。
迷われるのであれば、弊所にご連絡ください。

表書きにも注意

表書きには、内容証明郵便の判がつきます。
これだけでもプレッシャーがかかりますので、これ以上の特別な表記はいりません。

仮に自分が受け取ったとしましょう。
契約解除についてなどと書かれていたら、気分はよくないはずです。
誰かに見られたら、それこそ気分を害しますし、話もうまく進まないかもしれません。
そもそも問題解決するために送るのですから、問題を余計なところに派生させない配慮が大切です。