内容証明でパワハラを告発できるか?

パワハラを止めさせるためには、パワハラを停止してほしいという意思を相手に伝える必要があります。その方法として内容証明があります。
本記事ではパワハラに対し内容証明を使用するメリットや内容証明で書くときの注意点について解説します。

そもそもパワハラとは?

パワハラ行為が個人の名誉や行動の自由、平穏な生活を侵害すれば加害者は被害者に損害賠償しなければなりません(民法709条)。またパワハラ行為が業務遂行に関して行われたときは会社側に使用者責任が発生します(民法715条)。

厚生労働省のガイドラインにより、パワハラとは次の3条件に合致したものをいいます。
①優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③労働者の職場環境が害されるもの

パワハラの具体例として、次のものが挙げられます。

  • 頭を殴る、物を投げつけるなどの身体的攻撃
  • 同僚がいる中での大声の失跡などの精神的攻撃
  • 重要会議に参加させないなどの人間関係からの切り離し
  • 達成困難な過大やノルマを課すなどの過大な要求
  • 仕事を与えない、草むしりや雑用といった生産性のない仕事のみ課すなどの過少な要求
  • プライバシーに踏み込んだ発言などの個の侵害

内容証明とは?

内容証明は普通郵便や書留郵便と同じように郵便の一種ですが、送付日や送られた文書の内容、差出人と受取人、受取人が郵便を受け取ったことを日本郵政株式会社が証明してくれます。内容証明自体に法的根拠や拘束力はありません。しかし「パワハラ被害の郵便を送りました」「いや、届いていません」「郵便にはパワハラに関することは書かれていません」など事実関係での争いを予防できます。

パワハラへの停止要求に内容証明を使うメリット

相手側へのプレッシャー

内容証明郵便の表には「内容証明書在中」と赤スタンプが押されています。郵便が見慣れないフォーマルな形式であることで、多くの場合、受取人に強いストレスとプレッシャーを与えられます。ほとんどの人は内容証明郵便を受け取った経験など無いでしょう。
内容証明郵便は裁判に先だって送付されることが一般的です。「内容証明郵便を受け取った後、パワハラ行為の停止や損害賠償請求に応じないと裁判所、労働基準監督署に訴えるぞ」と意思表示することで相手側に強いプレッシャーを与えられ、適切な対応を迫れます。

パワハラを止めるよう求めたと証明できる

内容証明郵便を送ることにより、パワハラの停止を相手に通知したことを証明できます。したがって「パワハラ停止を要求した」、「いや要求されていない」という基本的な部分での争いを防げます。口頭や書面でのパワハラ停止要求は相手側が要求を受けていないと否認する可能性が大です。

内容証明で書くときの注意点

本章では内容証明でパワハラ停止要求するときの注意点を紹介するので参考にしてください。

具体的事実を書く

いつ、どこで、誰からどのようなパワハラ行為を受けたかを具体的に書いてください。たとえば、「令和6年4月10日、○○株式会社営業部会議室において、○○営業部長から『こんな営業成績しか出せないヤツは給料泥棒だ』『とっとと辞めろ』と他の社員がいる前で怒鳴られました。」のように具体的事実を書いてください。単に「パワハラされました」といった記載では不十分です。

要求を書く

どのような対応をしてほしいかも具体的に書きましょう。
たとえば、関係者の処分、慰謝料の請求

郵便の表書き

表書きに「パワハラ」と書かないようにしましょう。たとえば「○○株式会社のパワハラ行為について」といったものです。「パワハラ」と記載されていると相手側が受取りを拒否する恐れがあるからです。「○○株式会社御中 親展」と書く方が無難でしょう。