行政書士になる方法はなに?現役の行政書士がお伝えします!
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はじめに
個人や法人から依頼を受け、会社設立や店舗開業など許認可に関する公的書類の作成や官公署への申請を代行するのが「街の法律家」とも呼ばれる行政書士です。
身近な書類の作成や相談に応じることも、行政書士の大事な職務範囲になっています。
そんな行政書士になるには、行政書士法第2条に定める資格要件を満たさなければいけません。
本コラムでは、行政書士になるためにどんな方法があるか、大きく3つに分けてルートをご紹介します。
行政書士になるには
その1 行政書士試験に合格する
行政書士になる資格は、行政書士法第2条第1号に定められています。
「行政書士試験に合格した者」とあるのが重要です。
行政書士試験とは、総務大臣の指定試験機関である「一般財団法人行政書士試験研究センター」が全国の各都道府県知事の委任を受けて実施する国家試験をいいます。
出題範囲は大きく2つに分かれており、「行政書士の業務に関し必要な法令等」(出題数46題)と「行政書士の業務に関連する一般知識等」(出題数14題)です。
主となるのは法令問題で、憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学が出題範囲となります。
行政書士としての法律の知識や理解を問われることになるでしょう。
一般知識の問題では、政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解が出題範囲です。
実はこれらの出題範囲は、公務員試験と重なる部分がかなりあります。
両方の合格を目指している法学部生や法科大学院生も増えてきました。
それほど範囲や内容が酷似しているからです。
ただし、行政書士試験の方が法律に関する深い知識と判断力を問われます。
公務員試験は一般知識や数的処理といった事務仕事への適性試験といった傾向が強いといわれてきました。
これも業務範囲の違いが影響している部分です。
両方に合格したことのある知人に聞いたところ、行政書士試験の方が法律の現場で必要とされる法的思考力を試される問題が多くみられます。
公務員試験は単純な仕事を大量にこなし、IQテストのようなパズルを解くような、論理解釈の問題が多かったとのことでした。
なお、行政書士試験の合格率は例年10%程度の狭き門とされています。
簡単には合格できない国家試験と考えていいでしょう。
その2 公務員として一定期間務める
行政書士になる資格を定めた行政書士法第2条第7号には、別の要件が定められています。
「国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間(中略)が通算して20年以上(学校教育法(昭和22年法律第26号)による高等学校を卒業した者その他同法第九十条に規定する者にあつては17年以上)になる者」という規定です。
中卒採用として公務員として働いた場合は20年間、高卒以上での採用では17年間、行政事務を担当した期間があれば、行政書士となる資格が得られます。
これは、いわゆる特認制度です。
特認制度を利用して資格を取得するには、「公務員職歴証明書」等を行政書士会に提出し、これまで従事してきた職務内容について審査を受けなければいけません。
無条件になれるわけではなく、行政書士に必要なスキルがあると認められる必要があります。
仮に公務員として38年働いてきた方であっても、25年間が公的試験場で試験研究を担当してきたという場合、行政事務を担当した期間が最大で13年間となるでしょう。
行政事務の経験時間が満たされておらず、認められない可能性があります。
それほどしっかりとした経験時間が求められるため、行政書士に簡単になれるわけではありません。
その3 他の法律関係の資格を取得する
行政書士になる資格を定めた、行政書士法第2条第2号から第6号にも規定があります。
弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を有する者であれば、行政書士になれる資格があるとしているからです。
前述の資格合格者が行政書士登録する場合、もともと取得した資格がメインとして業務をしているでしょう。
実際には行政書士業務は、関連する一部業務に留まるのが一般的です。
「行政書士」に名前がよく似た資格に、司法書士があります。
不動産などの登記や供託業務が中心となる司法書士の場合、改めて行政書士試験を受験しなければいけません。
業務範囲の違いが大きなポイントになりますが、試験の内容の違いを見てみましょう。
司法試験との違い
行政書士と司法試験は、名前だけ見るとなんとなく近い感じもするかもしれません。
しかし、出題を見ると憲法、民法、行政法、商法という科目がありますが、出題法令が異なるのです。
科目名こそ同じであり、基礎とする部分では共通点があります。
内容として一部被りますが、どちらか片方の試験勉強をしたから、もう一方の試験対策が万全になるわけではありません。
出題範囲を見ると、あまり広そうに見えないかもしれませんが、実は広大な知識を求められます。
そのなかで、行政書士と司法書士として必要な知識を問われることになるため、出題が異なってくるのです。
司法書士試験は法務省が実施していますし、行政書士試験は総務大臣が定めた行政書士試験研究センターが実施しています。
このあたりでも、出題傾向が異なるのも理解できるでしょう。
憲法の場合でみてみます。
司法試験では、判例だけでなく学説が重視されることが知られてきました。
対する行政書士試験では、判例の趣旨が主に出題されます。
いわゆる「統治分野」では、司法試験では条文がそのまま選択肢として聞かれることはあまりありません。
行政書士試験では、条文がそのまま聞かれることが多いのです。
これもかなりの違いといえるでしょう。
司法試験の勉強をしていて行政書士試験を受ける場合、司法試験対策の知識は無駄にはなりません。
それでも行政書士試験の出題趣旨に合致した勉強をしなければならないのです。
行政書士試験合格者が司法試験の勉強に移行する場合、行政書士試験対策では殆ど行わなかった学説に関する勉強の必要が出てきます。
つまり、勉強方法そのものにも違いが出てくるのです。
民法、行政法、商法も同様に、出題範囲としてみておかなければいけないポイントが、若干異なります。
行政書士試験の行政法の難易度を見ると、司法試験の難易度を超えると指摘されてきました。
司法試験は科目数が多いだけに、行政法の知識は基礎的な内容を押さえることが大切です。
行政書士試験の行政法では、条文の細かい文言も出題されるため、高得点を取る場合は、それなりに時間をかけて勉強しなければいけないのです。
どちらが上とか下ではなく、そもそもの勉強方法から違いがあると考えていいでしょう。
職務範囲としても、結構な違いがあるからです。
まとめ
今回のコラムでは、行政書士になるために選択できる方法や、行政書士試験と司法試験の違いについてご紹介しました。
行政書士試験に合格した方でも、合格通知を受けたらすぐに行政書士として名乗り活動できるわけではありません。
実はそのままでは行政書士として仕事はできないからです。
行政書士となる資格を有する方が行政書士となるためには、行政書士名簿への登録を受ける必要があります(行政書士法第6条)。
行政書士名簿への登録を受けるためには、行政書士事務所を設けようとする都道府県の行政書士会を通じて必要な書類を提出するとともに、当該行政書士会に入会しなければいけません。
試験に合格しても、要件を満たしたとしても、登録されていないものは行政書士になれないのです。
この辺りは、行政書士としての信頼性の担保の部分ともいえるでしょう。
安心して相談、業務依頼してもらうためには、身元がしっかりしていないといけないからです。
役所への許認可申請や身近な法律に関するお困りごとがありましたら、ぜひ弊所までお気軽にご相談ください。