契約解除にも色々なパターンがありますが、本記事では大家さんから賃借人への賃貸借契約の解除を取り上げます。

内容証明郵便とは?

内容証明郵便は普通郵便や書留郵便と同じように郵便の一種です。送付日や送られた文書の内容、差出人名と受取人名、受取人が郵便を受け取ったことを日本郵政株式会社が証明してくれますが、内容証明郵便自体に法的根拠や拘束力はありません。

仮に賃借人に延滞している家賃10万円を請求する内容の内容証明郵便で送っても、請求に応じるか否かは賃借人が決めることです。

しかし「期日までに延滞賃料を支払わないときは賃貸借契約が解除になる旨の郵便を送りました」「いや、届いていません」「郵便には賃料支払請求や賃貸借契約の解除についての記載はありません」など事実関係での争いを予防できます。

契約解除を内容証明で行うメリット

契約解除するという意思を内容証明で表示するメリットを3つ解説します。

賃借人にプレッシャーを与えられる

内容証明郵便の表には「内容証明書在中」と赤スタンプが押されています。
郵便が見慣れないフォーマルな形式であることで、多くの場合、賃借人に強いストレスと心理的プレッシャーを与えられます。
ほとんどの賃借人は内容証明郵便を受け取った経験など無いでしょう。
内容証明郵便は裁判に先だって送付されることが一般的です。

「期日までに溜まった家賃を支払え。」「内容証明郵便を受け取った後、賃料の支払いに応じなければ賃貸借契約を解除するぞ」「解除になれば出て行ってもらう」といった大家さんの本気度を伝えることで賃借人に強いプレッシャーを与えられ、適切な対応を迫れます。

「賃料を支払わない場合は契約解除になる」と告げたと証明できる

内容証明郵便の送付により、延滞賃料の請求や賃貸借契約の解除を相手に通知したことを証明できます。したがって「請求した・請求されていない」という基本的な部分での争いを予防できます。

賃料請求の時効を一時的に中断できる

賃料の延滞を大家さん(賃料の債権者)が知ったときから5年を過ぎると、大家さんは延滞賃料を賃借人に請求できなくなります。
延滞している賃料を請求するためには、賃料の延滞を知ったときから5年以内に請求しなければなりません(民法第166条第1項)。内容証明郵便で賃料を請求すると、時効の完成を6カ月伸ばせます(民法第150条第1項)。賃料延滞を知ってから5年が過ぎそうなときは、賃借人への内容証明郵便の送付により時効を更新することをおすすめします。
なお、内容証明郵便の送付により時効を伸ばせるのは1回だけです。2回目以降は時効を伸ばせないためご注意ください(同条第2項)。

内容証明郵便で書くときの注意点

内容証明郵便で書く際に注意することを書式と記載内容、表書きに分けて見ていきましょう。

書式

内容証明郵便での書式は決められており、字数と行数の制限は下記のとおりとなっています。

  • 縦書きのときは1行20字以内で1枚26行以内
  • 横書きのときは1行20字以内で1枚26行以内、1行13字以内で1枚40行以内、1行26字以内で1枚20行以内

縦書き、横書きいずれにおいても1枚の文字数は520字以内にする必要があります。
そして同じ内容の書面を3通作成します。1通は郵便局が保管し、1通は相手方に送り、1通は控えとして大家さんが保管します。
訂正するときは間違った箇所に2本線を引き、適切に加筆してください。最後に何文字を訂正・削除・追加したかを記載する必要があります。

記載内容

具体的事実を書く

いつから賃料を延滞しているか、延滞総額はいくらか、といった具体的事実を書いてください。くれぐれも感情的にならず事実を淡々と記載しましょう。

要求を書く

賃借人にどのように対応してほしいかも具体的に書きましょう。
たとえば、請求金額、いつまでに支払ってほしいか(通常は5日から7日以内)などです。

郵便の表書き

表書きに「契約解除について」と書かないようにしましょう。「契約解除」と記載されていると賃借人が受け取らない可能性があるからです。「○○様親展」と書く方が無難でしょう。