内容証明郵便を送付後の債権回収の流れについて

はじめに

本ページでは、弊所が得意としている内容証明郵便を送付後の債権回収の流れについて、解説していきましょう。

内容証明郵便の概要と効果

「いつ」「何を相手に伝えたか」という事実を記録しておくことは、とても意味があります。
問題を大きくしないためにも、お互いで納得できる状況を作るためにも、解決の道を開くためにも有効です。
その際に用いられるのが、内容証明郵便です。

弊所は、内容証明郵便は、「よく切れる刀」と表現してきました。
刀とは、なにも切るだけのものではありません。
よく切れる刀であると思わせることも、非常に有効なわけです。
それと同じように、内容証明郵便を送付すると、送付相手に強烈なインパクトを与えます。
良くも悪くも、内容証明郵便で事態が大きく変わるのです。

内容証明郵便が、相手に強いインパクトを与えるのは、大きく以下の理由です。

  1. 普通の手紙とは異なり、格式がある形式を使い書かれることが多いため、普段とは違う印象を与える
  2. 内容証明郵便という普段見ない特殊感の強い手法による心理的な効果
  3. 「次には何か法的な手続きがくる」という、嫌な予感を相手に抱かせる

内容証明郵便を使うだけで、相手方を心理的に揺さぶれるのです。
この先の展開が見えない恐怖と威圧感を与える効果もあります。

内容証明郵便は、何も特別なものではありません。
ご自身で作成も可能ですが、以下のことには注意してください。

  1. 文面がとても長い
  2. 伝えたいのかが見えてこない
  3. 感情的で伝わらない

順番に見ていきましょう。
内容証明郵便は、長ければいいわけではありません。
何故かといえば、2番ともかかわりますが、いったい何を伝えたいか、要点が見にくくなるからです。
どこを読んでいいのかわからなくなるような文章では、内容証明郵便として適しません。
そのため、簡潔にまとめることがポイントです。
通知者が実現したい効力を、端的かつわかりやすくまとめることが重要になりますので、以下の要点を重視してみてください。

  1. 相手に対してどうして欲しいのか 3つ程度
  2. 感情を極力入れず、相手の人権にも配慮する
  3. 対応期限を入れる

本文は、事案の内容によって書き方が変わります。
柔らかく書くこともあれば、あえて硬めに記載することもあるからです。
ですが、感情的な文章は効力を発揮しにくくなります。
感情だけが伝わり、本文を理解されないことも出てくるためです。

債権回収実現の方法

内容証明郵便の送付が完了したら、次は債権回収方法です。
相手方が任意に送付内容の履行に応じない場合もあり得るからです。
債権回収を実現させるには、以下のような方法があります。

・任意交渉

任意交渉とは、係争案件について当事者で直接交渉を行う裁判外手続のことです。
任意交渉は裁判外手続になるため、簡易かつ迅速に紛争を解決できる手段になります。
裁判になるとどうしても時間がかかりますが、任意交渉ならお互いで話合いさえできれば進められるからです。
当事者間の交渉ですので、第三者に公表する必要もありません。
誰にも知られずに進めることもできます。
解決内容も当事者間の合意となるので、柔軟な解決方法を選択できるのもメリットでしょう。
実務上では、合意書や公正証書を作成し、お互いで納得できた証拠を作り、解決となります。

・支払督促

支払督促とは、債務者が支払わない場合、債権者の申立てのみによって、簡易裁判所の書記官が債務者に支払を命じる略式手続のことです。
貸したお金や売掛金など、債権額にかかわらず利用できます。
支払督促の手続きは、書類審査のみで行われるのが特徴です。
裁判所に出向く必要もありませんし、手数料は訴訟の半額程度で済みます。
債権者の申立てに対して、簡易裁判所の書記官が審査し、申立てのみに基づいて金銭の支払を命じるのです。
なによりも債務者の言い分も関係なく利用できるのが大きな意味を持つでしょう。

支払督促を送っても、債務者から何ら反応がない場合もあります。
支払もなく、異議申立てもない場合、債権者は仮執行申立てができるのです。
支払督促に仮執行宣言を付してももらい、強制執行の手続をとれます。

債務者側としては、支払督促を受けてから2週間以内に裁判所に異議を申立てが可能です。
異議申立てをすると、請求額に応じ地方裁判所又は簡易裁判所の民事訴訟の手続に移行できます。
支払督促は簡易で迅速な手続ですが、債務者側が異議を申立てることで通常訴訟に移行するのがデメリットです。

・民事保全

民事保全とは、仮差押えと同様に、将来強制執行する時に備え保全することを目的とした仮処分です。
民事訴訟の権利実現を保全することが目的であり、将来の回収を容易にします。
裁判上の手続で、将来の訴訟を予定したことに対する、付随的な手続です。
申立てには厳格な証明まで要求されないため、手続きは迅速に進められます。
仮差押えが認められるということは、債務者の預貯金等の財産を差し押さえが可能です。
早期の債権回収が期待できる強力な解決方法のひとつになります。
要件は以下の2つです。

1被保全権利があること
2保全の必要性があること

この2つの要件を満たさなければ民事保全できません。
被保全権利とは、売掛金などのことで、金銭の支払いを目的としているものです。
条件や期限がついていても民事保全できます。
ただし、民事保全の利用に当たっては担保を用意しなければなりません。
この担保は、保全が違法だった時に損害賠償の引当金になります。
このように、他の手続にはないデメリットもある方法です。

・強制執行

強制的に債権を履行させる手続が、強制執行です。
国家機関が関与吸う方法で、債権者の給付請求権の内容を強制的に実現します。
債権者の請求を認容する判決や裁判上の和解が成立したにもかかわらず、債務の支払等に応じない場合にできる方法です。
判決等の債務名義を得た債権者の申立てに基づいて、相手方に対して裁判所が強制的に請求権を実現します。
債権回収としては、強制執行は最終手段です。
費用もとてもかかりますし、時間で見れば数年かかることも珍しくありません。
さらに債務者に財産がなければ、回収できないため、ある程度状況を見越して行動しないと実現不可能になります。

・少額訴訟

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払を求める場合にできる訴訟です。
原則として、1回の審理で解決を図ります。
つまり、短時間で解決を目指せる、簡易裁判所における特別の訴訟手続です(民事訴訟法第368条第1項)。
手続も簡単で、判決が出るまでの時間も短いですが、条件付きということになるでしょう。
迅速に債権回収ができる可能性がある反面、審理は1回で終わるため、ミスは許されません。
債務者が通常訴訟を望む場合もあり、途中から債権者だけでの対応が難しくなることもあります。

少額訴訟を提起するには簡単です。
簡易裁判所に訴状・証拠書類を提出するだけなので、1人でもできます。
訴訟の途中で和解もできますし、和解調書に基づき強制執行も可能です。
訴訟費用は、印紙代と郵便切手代を合わせても1万円かかりません。

債権額が60万円と限定されていること、同一の債権者が同一の裁判所で訴訟を提起できる回数が、年10回までと制限されているのはデメリットになるでしょう。
債務者が通常訴訟へ移行を求めてきた場合は少額訴訟を提起できません。
少額訴訟の場合は、反訴が認めると、不服があっても控訴できなくなります。
通常訴訟とは異なる点がいくつもあることから注意が必要です。
さらに不服申し立ては異議の申し立てに限定されます。

・通常訴訟

訴訟とは、当事者間の紛争に関し、裁判所による判断を求める裁判手続です。
当事者間の合意がなくても、裁判所の判断で終局的な解決を図れます。
効力が強いだけに、厳密な主張・立証が求められることになるでしょう。
負担で見ると、他の手続よりもはるかに大きくなるのです。
法に基づいて厳格に行われるため、柔軟な解決を図りにくく、本当に「最後の手段」ということになります。

まとめ

本コラムでは、以下について説明させていただきました。

1 内容証明の概要と効果
2 債権回収方法の紹介
3 少額訴訟制度

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