内容証明郵便を送付して、相手から反応がない場合に検討する「少額訴訟」の留意点について、解説します。
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はじめに
こんにちは、東京深川行政書士事務所です。
内容証明郵便で相手に通知を行ったものの、相手から全く反応がない場合、訴訟を検討することになります。
経験上、内容証明郵便を専門家が送付した場合、8割程度の確率で相手からなんらかの反応がありますが、どうしても解決しない場合は、裁判所に申し立てを行い、決着をつけることとなります。
訴状が相手に到達した場合、訴訟前に相手方と話し合いが成立し、解決することがあります。
特に相手に請求する金額が60万円と少額の場合、少額訴訟という手続を検討することになります。
通常、訴訟を行う場合、何度も裁判所に行き手続を進めることになりますが、この少額訴訟の場合、1回の審理で手続が完結します。
一方、少額訴訟は、以下の留意点もありますので、本ページでは少額訴訟の手続の概要と、留意点についてお伝えいたします。
少額訴訟の手続について
少額訴訟手続は、60万円以下の金銭の支払いを求める紛争について、裁判所が当事者双方の言い分を聞き、証拠を調べた上でなるべく1回の期日で審理を終える特別な手続です。
通常の訴訟手続とは一部手続が異なります。
先述の通り、少額訴訟手続は、なるべく1回の口頭弁論期日で審理を終えることを予定しています。
原告が訴状に記載した事項のほか紛争のいきさつ等について、裁判所に伝えたい点がある場合は、口頭弁論期日までに裁判所に説明できるように準備し、また、調べて欲しい証拠があれば、口頭弁論日までに全ての証拠を提出できるように準備する必要があります。
原告から提起された少額訴訟事件に対して、相手方が、通常の訴訟手続に従った審理を希望するとき、または、裁判所が事件の性質及び内容から通常の訴訟手続によって審理するのが適当であると判断したときは、通常の訴訟手続によって審理されることになります。
口頭弁論期日では、当事者の言い分を裏付ける証拠書類を調べたり、証人及び当事者から、紛争の実状及び経過を聞かれます。
従って、口頭弁論期日には必要な証拠書類の原本を持参し、予定の証人を連れて行く必要があります。
少額訴訟手続では、早期に紛争を解決することを目的としていますので、証拠はその日のうちに調べを終えることができる証拠に限られます。
民事訴訟法に定める検証や鑑定等は実施することはできません。
訴訟手続の留意点
訴訟手続には、以下のような留意点があります。
1 勝訴判決をしても、相手の財産を知らなければ差押えができない
まず、勝訴判決を得ても、被告が任意に支払わない場合は、ご自身で被告の財産を調査し、何を差し押さえるか特定した上で強制執行の手続を行う必要があります。
裁判所は、その協力はできませんので、勝訴判決と、必ず支払われることは、イコールにならないことに留意する必要があります。
また、一般的に判決より和解の方が被告の任意の支払が期待できることもあります。
今の段階で和解を考えていない方は、検討が必要です
2 場合によっては移送されてしまうことがある
被告の住所が遠方である場合、被告からの申立又は職権で事件を移送される場合があります。
3 相手に訴状が送達されない場合は、手続や費用が必要なことがある
被告への書類の送達ができなかった場合は、原告であるあなたに住民票や現地調査報告書などの資料の提出を求めたり、また受付段階で納めた切手が送達状況によって不足する場合には、別途納付を求めたされる場合があります。
4 主張立証責任は簡素化されない
少額訴訟だからといって、当事者の主張立証責任が通常訴訟手続よりも簡素化される訳ではありません。
また、原告側は、検討した結果訴えを提起したと思われますが、被告側は、訴状を見て初めて応訴を迫られる場合が多いので、審理に入るまで、少額訴訟ではなく、通常訴訟による手続を申し立てることができます。
5 支払方法について、裁判所が特別な定めを行うことがある
仮に、原告言い分が認められる場合でも、裁判所は、相手方の収入等を考慮して、3年の範囲内で支払猶予又は分割払いを定めたり、相手方が期限内に支払いをし、または支払いを怠ることなく分割払いを完了したときは、訴え提起後の遅延損害金の支払いを免除する判決をする場合があります。
6 不服の申し立てに制限がある
少額訴訟の判決に対し不服がある場合には、異議の申立てはできますが、地方裁判所に不服の申立て(控訴)はできず、異議に対する判決についても、不服の申立て(控訴)はできません。
まとめ
本ページでは、少額訴訟の手続概要と留意点についてお伝えいたしました。
専門用語が多いため、一読のみでは何のことを言っているのかがよくわからないのではないかと思います。
少額訴訟を進める場合、弁護士に依頼すると採算が合わないことがありますので、認定司法書士に依頼することが一般的です。
もし、訴訟手続の依頼を希望される方は、地域の認定司法書士を探されることをお勧めします。