行政書士の資格は、就職や転職で有利となるか?企業法務部門経験者がお伝えいたします

はじめに

こんにちは、東京深川行政書士事務所です。

本ブログでは、行政書士と企業法務についてお伝えしたページがいくつかありますが、企業法務経験者が行政書士試験を受験される方や、企業法務の道を目指していて、その過程で行政書士試験の挑戦を決意される方のアクセスが多いように思います。

本ページでは行政書士資格の保有者が、就職や転職で有利となるかについて、お伝えいたします。

なお、企業法務の仕事については、【こちら】をご覧ください。

増える行政書士受験者

新型コロナウイルスをきっかけに、行政書士試験の受験者が増加傾向にあります。

毎年受験者に対して10パーセント前後の方が合格していますが、この10パーセントという数字が多いと見るか、少ないと見るかは人それぞれだと思います。

筆者は、上位10パーセントしか合格できないという点で、決して優しい試験ではないと思います。

実際、行政書士試験に出題される行政法分野の問題は、最難関国家資格である司法試験より難易度が高いです。

行政書士試験は、司法試験や、司法書士試験と比較すると、学習時間が短いこともあり、名の知れた国家資格として、行政書士試験がとても人気です。

行政書士試験を取る理由は、実際に開業したい、企業内で評価される等様々だと思いますが、実際に行政書士試験が世間でどれだけ評価されるかは、皆様の気になるところだと思います。

増える企業内弁護士

少し話が飛びますが、「企業内弁護士」という言葉はご存知でしょうか。

業界では、「インハウスロイヤー」と言われます。

弁護士は、司法試験合格後、1年間の司法修習を経て、法曹三者のいずれかの道を選択することが一般的です。

弁護士登録をする場合、一般的には法律事務所に所属するのですが、最近は自治体や企業に勤めることを選択する人も増えています。

企業内弁護士は、10年ほど前はかなり少数派でしたが、いまではかなり普及し、珍しくなくなりました。

大手上場企業であれば、調べれば1名は登録者が存在し、最近では、ベンチャー企業でも企業内弁護士が在籍していることもあります。

企業内弁護士の年収は、年次にもよりますが600万円から1,200万円が相場です。

企業に勤める行政書士有資格者は珍しい

先述の通り、企業内で働く弁護士が定着した反面で、企業内で働く行政書士はとても珍しく、業界内で取り上げられることもほぼ無いです。

これは、行政書士試験自体が、異業種で働いている方の受験が多く、合格後すぐに開業される方が多いからでは無いかと考えております。

法学部在学中の大学生や法科大学院生の受験も一定数いるのですが、全体の受験者からすると、10代、20代前半の受験生はかなり少数派で、仮に合格しても、登録しない方が圧倒的です。

結果的に企業の法務部門に就職しても、わざわざ行政書士登録をしない選択をするのが通常です。

筆者は、令和3年の行政書士試験に、企業の法務部門で働いている際に合格し、そのまま行政書士登録。

全国でも珍しい行政書士有資格者の、企業法務担当者となりました。

行政書士資格を取得してよかったかご質問をいただくことがありますが、行政書士試験に合格できるレベルになる頃には、行政法や民法の知識がそれなりに充実しており、登録と共に行政書士実務の勉強もするため、商事法務や許認可に関する業務を進める場面で非常に役に立ちました。

合格して開業を選択する方が圧倒的に多い

行政書士登録後、様々な新人行政書士とお会いしておりますが、行政書士試験合格後、企業の法務部門に就職、転職するよりは、自らが開業の選択をされる方が圧倒的に多いです。

行政書士全体で見ると、いわゆる企業間の契約書作成を行う行政書士を専門とする方も居るのですが、数としては少なめです。

直近ですと、ビザや建設業の許認可といった、いわゆる行政書士の王道業務を専門特化で独立開業される方が圧倒的に多いです。

就職に有利となるか?

行政書士の資格が、企業法務ポジションの就職や転職で役に立つかどうか聞かれることがありますが、その方の現在の年齢や、これまでの法務業務に関する経験がどれだけあるかどうかによって評価は全く左右されます。

例えば、法学部卒業し、行政書士試験合格実績がある20代の場合、未経験で企業の法務部門に採用される可能性は極めて高いです。

いわゆるポテンシャル人材です。

一方、これまでに企業法務の経験が全く無い30代以上の方の場合、企業の法務部門として内定をもらうのは、ハードル高めです。

企業法務関連ポジションに挑戦する場合、資格以上にこれまでの企業法務経験が圧倒的に重視されるのが現実です。

したがって、行政書士試験に合格したことをもって、直ちに就職や転職に有利にはならない点に留意が必要です。

登録してからが大変なのが行政書士資格

行政書士試験は、一定時間勉強し、重要事項を暗記すれば、法学部を卒業しなくても合格できてしまうことがあります。

合格者の中には、合格者平均点を大幅に上回る成績で合格される方もいらっしゃいます。

しかし、試験の成績と実務ができるかはイコールとなりません。

行政書士登録をしたら、試験以上に覚えることが多く、短期間で多くの情報を正確に処理しなければならない点で、大変面白い資格であると共に、とても大変な資格でもあります。

まとめ

本ページでは、以下の3つについて、お伝えいたしました。

  • 弁護士の企業への就職者は多い反面、行政書士は極めて珍しい
  • 行政書士試験合格者は、合格後就職ではなく開業を選択される方が多い
  • 行政書士資格は、これまでの企業法務経験と組み合わせることにより、就職や転職に有利になる。
    合格によって、直ちに有利にはならない。

就職や転職でステップアップするために行政書士試験を勉強されている方にとっては、少しがっかりする内容だったかも知れません。

一方で、行政書士資格は、自由度が高く、様々な要素を組み合わせることによって、大きな武器になる資格でもあります。

行政書士登録を検討されている方は、様々な現役行政書士と知り合っていただき、ご自身の目指す行政書士像を見つけていただけますと幸いです。