遺言書は全部で3種類!それぞれの特徴や作成方法を紹介します

遺言書とは

遺言書とは相続に関する被相続人の意思を示す書面です。生前に行う遺産相続に関する意思表示を遺言、遺言の内容を記載した書類を遺言と呼びます。

遺言書がない場合、遺産相続は相続人全員による遺産分割協議に基づいて行われます。相続の権利を持つのは原則として法定相続人のみとなり、被相続人の希望する通りの相続ができるとは限りません。

遺言書があれば、遺産相続は基本的に遺言書の通りに行われます。遺産分割協議の必要がなくなるため、相続がスムーズに進みます。また、遺言書に記載があれば法定相続人以外への相続も可能です。

相続したい相手や内容が決まっている、法定相続人以外に相続したい等の場合、遺言書を作成するのが良いでしょう。

一般的に作成される遺言書は3種類

遺言書は普通方式遺言と特別方式遺言の2つに大別され、普通方式遺言はさらに3種類に、特別方式遺言は2種類に分けられます。

特別方式遺言は、遺言者の死期が迫っている・遺言書が何らかの事情により一般社会から隔離されている場合に作成される遺言書です。普通の遺言書を作成できない場合に用いられるもので、一般的に作成することはありません。

今回は一般的に作成される普通方式遺言3種類についてそれぞれ詳しく解説します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は遺言者が手書きで作成する遺言書です。本文は遺言者の手書きのみ認められており、代筆やPCでの作成は認められていません。ただし平成31年1月13日以降は、財産目録に限り代筆やPCでの作成ができるようになりました。

自筆証書遺言のメリットとして以下の2点が挙げられます。

  • 作成するのに費用がかからない
  • 他の遺言と違い遺言者本人の署名と押印のみで作成できる

注意するべきデメリットは以下の3点です。

  • 一定の要件を満たさなければ無効になる恐れがある
  • 紛失や改ざんの恐れがある
  • 自分で保管する場合、遺言者の死後に遺言者の家族等が遺言書の検認手続きをする必要がある
    なお紛失・改ざんのリスクや検認手続きに関するデメリットは、遺言書を法務局に預ければ解消されます。

公正証書遺言

公正証書遺言とは公証人の関与・立会いのもとで作成する遺言書です。証人2人以上の立会いのもと、公証役場で遺言者本人が遺言内容を後述し、その内容を公証人が記述して作成します。公証人が記述した内容に問題ないことを確認した後、遺言者と証人が遺言書に署名押印し、その後公証人も署名押印を行います。

公正証書遺言の主なメリットは以下の3点です。

  • 公証人の関与が入るため、法的に有効な遺言書を確実に作成できる
  • 遺言書の原本を公証役場で保管するため、紛失や隠ぺいのリスクがない
  • 法的な面で確実に有効かつ第三者によるチェックも入っているため、遺言書の内容がトラブルの原因になる恐れが小さく済む

公正証書遺言のデメリットとして以下の3点が挙げられます。

  • 公正証書での手続きが必要であり手間がかかる
  • 数千円から数万円、ケースによってはそれ以上の手数料がかかる
    ※公正証書遺言の費用は相続財産の額によって異なります
  • 遺言の内容を秘密にできない

秘密証書遺言

秘密証書遺言は遺言の内容を秘密にした状態で、遺言の存在のみについて公証役場で認証を受ける遺言書です。遺言者が作成した遺言書を公証役場に提出し、証人2人以上と公証人1人以上の前で所定の手続きを行う必要があります。

秘密証書遺言の主なメリットは以下の2点です。

  • 遺言書が本物であることを証明できる
  • 遺言の内容を秘密にできる

デメリットとして以下の4点が挙げられます。

  • 紛失や隠ぺい、遺言書が発見されない等のリスクがある
  • 一律11,000円の手数料がかかる
  • 一定の要件を満たさなければ無効になる恐れがある
  • 遺言者の死後に遺言者の家族等が遺言書の検認手続きをする必要がある

なお、秘密証書遺言が作成される場面はあまり多くありません。秘密証書遺言は作成に費用や手間がかかる上に検認も必要であり、かつ、遺言の形式が守れていない等の理由から無効になる恐れもあります。「遺言の内容を秘密にしつつ本物であることの認証のみ受けたいという場合を除き、あえて秘密証書遺言を選ぶ理由はないといえるでしょう。